『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
子どもの「わかった」を疑え
自学力を養うためのプロセスを、うまくつくってやるのは大人の役目だ。そう清水さんから教わったのだが、そうなると親も意識を変える必要がありそうだ。
忍耐力をもって子に接しなければいけないし、声かけのテクニックもいるだろう。
「そうですね、たとえば『勉強どう? だいじょうぶ? この問題わかった?』などと、つい子には聞いてしまいがちですが、そう聞かれれば子どもはたいてい『だいじょうぶだよ!』と答えます。
これは反射のようなものなので、本当にだいじょうぶなのか、学習内容を理解しているかどうかはほとんどわかりません。
そういうときは、『覚えたこと、お母さんに教えてくれる? 説明してみてくれない?』と尋ねたり、同じ内容だけど角度の違う問題を『じゃあこれも解ける?』と出してみたりしましょう。
大人が子のふるまいを評価するときは、アウトプットを評価すべきなのです。『だいじょうぶだよ』『わかったよ』という言葉は、アウトプットではありませんからね」
「教科横断」に対応するには、中学の勉強を大事にして
ここでひとつ気になるのは、2020年教育・受験改革以降のことだ。
学ぶ目的や内容が変わるとなれば、親が果たすふるまいも変えねばならないのか。また、特別な対策は必要じゃないのだろうか。
「焦る必要はありません。たとえばいま中学受験の勉強をしている家庭は、そのままのやり方を継続して問題ないでしょう。
学ぶことに対して真摯に努力をしてきたのなら、それは制度が変わったってゼロになどなりませんから。
ひとつ心がまえがあるとすれば、中学時代の勉強を、ぜひ大切にしていただきたい。というのは、中学校の勉強が最も網羅的であり、かつ学問の基礎でもあるからです。
教育改革後の大学受験は、教科横断型のものになっていきます。たとえ文系に進むと決めた人でも、数学や理科の基礎的学力がどうしても必要になってきます。
中学校では、だれもが全教科の基礎をまんべんなく学びますね。そこをしっかり勉強しておかないと、大学受験期になってから取り返そうと思っても大変なのです。
もうひとつ、中学・高校時代に、自分で掘り下げたいプロジェクトを持つこともおすすめしたいところです。これは日々の学びを深くすることとともに、教育改革で強化される記述問題対策としても力を発揮しますので。
記述式の問題がこれからぐんと増えていくといいますが、むやみに怖がることはありません。記述式の答え方にはちゃんと型があり、そのフォーマットを覚えてしまえばだれだって解答はつくれます。
問題はむしろ、そのフォーマットに流し込むべき自分の体験、考え、主張があるかどうかです。
試験に臨んでその場で絞り出すわけにもいかないので、これも前もって準備しておく必要があります。そのときに『自分プロジェクト』を活用すればいいのです」
次回で「自分プロジェクト」の進め方、清水さんにしかと教えてもらうぞ。
清水章弘 1987年、千葉県生まれ。私立海城中学高校、東京大学教育学部を経て、同大学院(教育学研究科)修了。勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を東京と京都で運営。著書は『東大生が知っている 努力を結果に結びつける17のルール』(幻冬舎)など多数。最近は、TBS系「教えてもらう前と後」(火曜よる8時~)に出演し、次回は4月23日(火)。1児のお父さん。
* * *
「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
外部リンク