『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
子どもたちのライフワーク探しをサポート
塾や予備校は、いまや百花繚乱だな。教育・受験産業の中心に位置していると言ってもちろん過言じゃない。
だけど、考えてみろ。大きな視点から見ると、どの塾・予備校も方向性は似通っている。
目標とするのが「能力開発」だからである。各教科における生徒一人ひとりの学力を伸ばすことを目指していて、具体的にはよりいい点数をとれるよう指導してくれるわけだ。
これはごく当たり前の話に思える。親としては、そのために受講料を払っているのだから、成績アップに効果がなくては困るだろう。
ところが、だ。ここに、目標自体が他と異なる塾がある。「興味開発」をうたい、東京・三鷹に校舎を構える探究学舎。代表の宝槻泰伸さんは言う。
「子どもたちに『驚きと感動の種をまく』というのが私たちのコンセプト。ですから、学力の伸びは指標にしていませんし、受験も目標ではありません。
じゃあ何を目指す塾なのか。わかりやすい例でいえば、さかなクンのように生きられる人を生み出すことです。
魚類学者として活躍する彼は、好きなことを突き詰めて、それを仕事にし、世の中に知見を広めて社会に貢献していますよね。これってひとつの人生の理想形ではないですか。
僕の言い方で表現すれば、さかなクンは『ライフワーク』のある生き方をしている。この対極にあるのは、『ライスワーク』に終始する生き方です。
ライス、つまりごはんを食べるためだけに働くこと。それで自分や家族を養えるのももちろん大切かつ立派なことですが、これからの時代に目指すべきは、やはり好きなことを突き詰めて、ライフワーク一本で生きていけるようになることですね」
いったん火がついたらどんどん熱中する
そのためにはどうしたらいいか。「興味開発を施して、何らかの対象に対する驚きと感動を体験する機会を与え、好奇心に火をつける。
いったん熱中してしまえば、子どもはその分野についての知識をみずから掘り下げていくものです。ライフワークへつながる何かを見つけてもらう、僕らがしているのはそういうことです」
具体的には探究学舎では、宇宙、生命、元素、経済、歴史など、従来の教科割りにとらわれない項目を設けて、参加者全員が熱中する「魔法の授業」を展開している。
のちに習熟度テストなどをするわけでもないので、その授業によっていきなり成績がどれほど上がるかはわからないが、まちがいなく自然の驚異や人類の叡智に対する興味関心はたっぷり抱くことになるのだという。
能力開発から、興味開発へ。その重要性はこれからますます大きくなるだろうと語る宝槻さんの話、次回からさらに聞いていくぞ。
宝槻泰伸 1981年5月25日、東京都三鷹市生まれ。高校や塾に行かずに、京都大学に合格した異色の経歴を持つ。東京都三鷹市にある塾「探究学舎」の代表。子どもの好奇心に火をつけるユニークな授業に、年間2,000人以上の参加者が全国から集まる。出演番組は『NHKニッポンのジレンマ』。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)などがある。5人の子どものお父さん。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。中3の娘が受験勉強中。
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