行き過ぎた完食指導が問題に
給食を「残さず食べなさい」という「完食指導」が今、一部で問題となっています。栄養をとるためや残飯を少なくするためには残さず食べることは大事ですが、指導が行き過ぎると、ひどい場合は不登校や、大人になってまで続く心のきずになってしまいます。「指導」される側のみなさんは、どうすればよいのでしょうか。(八木みどり)
ネットなどで議論
完食指導は以前からありましたが、近年はインターネット上を中心に、たびたび議論となっています。2017年には岐阜県の小学校で、先生による完食指導の結果、児童5人が食べたものをはいてしまうということも起こり、問題となりました。支援団体には完食指導について、数多くの相談が寄せられているといいます。
朝小リポーターを対象にアンケートを行ったところ、85人から回答がありました。
残さず食べるのが大変かどうかをたずねたところ、63人は「大変だとは思わない」と回答。一方で、「ちょっと大変」は20人、「とても大変」も2人いました。
「大変」と感じる理由としては、「話しているわけではないけれど、間に合わなくなってしまう」「きらいなものが多いので、食べられるものが少ない」といった声がありました。
残す量減らす対策
先生からの完食指導のあり方についても質問しました。最も多かったのは「なるべく食べきるように」と言われている人で、51人。あらかじめ、自分で食べられる量に減らす、あまった料理を先生が配る――という取り組みで、残す量を減らそうとする取り組みも目立ちました。
「絶対に食べきるように」と言われている人も3人いました。その中でも、時間内に食べきれなかったら残すことがゆるされている人もいれば、「残っているものがなくならないと、休み時間にならない」という人も。
また、「なるべく食べきるように言われている」と回答してくれた人の中にも、食べきるまでは、休み時間も食べ続けなければいけないと答えた人がいました。
「無理強い」は逆効果
専門家の考えを聞きました。
全国各地の学校給食を食べてきた料理研究家の吉原ひろこさんは、「押しつけや無理強いは逆効果」と指摘。給食時間の短さもふくめ、完食指導に関する問題は、「大人が考えるべき課題」だとします。
完食指導のあり方は、現在はほぼ担任の先生に任せられています。これに対し、吉原さんは「学年が上がって先生が代わるごとに対応が変わってしまうことがないよう、自治体ごとに指針が必要」と話します。
一方、子どもたちへは「食べ物は、みなさんの体にとって必要なもの。食べられないものでも、少しでも努力してみよう。がんばる力は、給食以外にも、どんなことにも通じるよ」とエールを送ります。
行動科学を用いた食育について研究しているお茶の水女子大学教授の赤松利恵さんも、「無理やり食べさせても、もっときらいになってしまうだけ」と、行き過ぎた指導には否定的です。
チャレンジは大切
ただ、子どもたちには「自分の食べられる量だけ配膳してもらうなど、自分でコントロールする力は大切。それと同時に、一口からでもチャレンジしていくことも忘れないで」とアドバイスします。
「去年より、今年はもう少し食べられるようになった」など、「できるようになったこと」を発見していく、その積み重ねが重要だと話します。
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