ICTを駆使して活用の時間を確保
これからの時代に求められる教育、アクティブラーニングはどう進めればいいのか。
高橋一也先生の例を見ていくぞ。
そこではICT(情報通信技術)を活用したデジタルツールを取り入れるのはもちろん、社会との結びつきも重視して授業が組み立てられているのだ。
「主体的・能動的に学ぶアクティブラーニングの目的を、まずは言い換えておきましょう。
従来の知識偏重の教育は『知っている』状態になることを評価していましたが、その目標を『理解する』状態へと変える必要があります。
知っているだけじゃなくて理解したと言うには、ものごとをより具体的に捉えて、自在に使いこなせるようにならなければいけません。
そこで私はまず、ICTをフル活用します。
たとえば通常の授業でよく見られる板書の書き写し、これは時間短縮のために省略します。
覚えなければいけない事項は、事前に生徒へデジタルツールを通じて配布しておけばいいので。授業でもタブレットを活用して、共有する知識のやりとりは手間をかけずにおこないます。
そうして文法や英単語など最低限覚えなければならない事柄は、通常なら50分かけて解説などするところを20分ほどに凝縮。
残りの30分を覚えた知識を理解し活用するためのグループ学習やディベートに充てます」
英語の時間に気候の調べ学習!?
日本全国どこでも見られる英語の授業風景、先生が板書をして生徒がそれを書き写したり、生徒を順に指名して長文を一文ずつ訳していくような様子とは、高橋先生の授業はずいぶん異なる。
文法、単語、長文読解などに取り組むのは授業の一部であって、メインはどちらかといえば話し合いや発表の時間となる。
たとえば中学の英語でブリザードをテーマにした文章が出てくれば、世界の気候について生徒たちが調べる課題を出す。
そうしてある気候の土地ではどんな住居がふさわしいか、レゴブロックを使って表現してもらうのだ。
生徒は自分たちがつくり上げたレゴ作品をもとに、なぜこの形態にしたのか、どこに着目したかを英作文で発表する。
その過程で、英語の運用能力を身につけていくわけである。
たしかにこれなら、英語で必要なことを伝えようという意欲が、生徒の側からごく自然に湧いてきそうに思えるな。
高橋一也 1980年1月1日、秋田県生まれ。英語教諭。工学院大学附属中学の教頭。慶應義塾大学、同大学院で英文学を研究した後、アメリカに留学。ジョージア大学で、最も効果的な教育を設計・開発する方法論である「インストラクショナル・デザイン」を研究。帰国後、2015年から工学院大学附属中学・高校で教鞭をとる。2016年、教育界のノーベル賞といわれるグローバル・ティーチャー賞のトップ10に日本人で初めてノミネートされる。現在、オランダ・ユトレヒト大学大学院にて発達認知心理学の研究に取り組む。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
※高橋一也先生のインタビューは、7月1、3、5、8、10日に全5回配信します。今回は第2回でした。
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