日本でいち早く授業に取り入れた
教育改革の一環としてこのごろ盛んに聞く言葉が「アクティブラーニング」だ。
従来の一方的な詰め込み式授業ではなくて、学ぶ側が主体性を持って能動的に学習へと取り組めるカリキュラムや授業形態をとるべし、というものだな。
実践例も増えてきているようだが、これをいち早く、本来の意味合いにおいて、高いレベルで取り入れてきた先生がいるぞ。
工学院大学附属中学校・高等学校の中学校教頭で、教科としては英語を教えている高橋一也教諭だ。
「そうですね、たしかにアクティブラーニングとは昨今、よく耳にするようになりました。
でもこの言葉、横文字だから海外では浸透しているのかといえばじつはそうじゃありません。ほぼ日本でしか聞かないものなんです。
というのも、多くの国ではこれが当たり前のものだから。わざわざ唱えることでもないので、言葉としてもほとんど使われないのが実状です。
それに、アクティブラーニングとは何らかのスキルやメソッドを指すものではありません。考え方、思想のことです。
ですから『こういう方法に則ってやればアクティブラーニングが完成する』といった確立した方法なんてありません。
教える側や学校を運営する側がそれぞれに創意工夫して、主体的で能動的に学べる場をつくっていかないといけないのです」
教育界のノーベル賞、トップ10に選出
なるほど、ならばアクティブラーニングを成立させるには、どういうやり方があるのか。どんな授業ならアクティブラーニングになり得るのか。留意点はどこかなど、ぜひ教えていただこう。
そのあたりを伺うのに、高橋先生はまことふさわしい。
なにしろ2016年には、教育界のノーベル賞といわれることもある「グローバル・ティーチャー賞」で、高橋先生はトップ10に選出された経歴を持つのだ。
「もともと私は米国で、学習科学理論やインストラクショナル・デザイン(最適な学習効果が上がるための計画)などを学んで帰国し、教職に就きました。
主に英語の授業を通して、アクティブラーニングの実践をしてきましたので、その様子をお伝えします」
次回、さらに具体的に、高橋先生流の学びを見せてもらうぞ。
髙橋一也 1980年1月1日、秋田県生まれ。英語教諭。工学院大学附属中学の教頭。慶應義塾大学、同大学院で英文学を研究した後、アメリカに留学。ジョージア大学で、最も効果的な教育を設計・開発する方法論である「インストラクショナル・デザイン」を研究。帰国後、2015年から工学院大学附属中学・高校で教鞭をとる。2016年、教育界のノーベル賞といわれるグローバル・ティーチャー賞のトップ10に日本人で初めてノミネートされる。現在、オランダ・ユトレヒト大学大学院にて発達認知心理学の研究に取り組む。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
※高橋一也先生のインタビューは、7月1、3、5、8、10日に全5回配信します。今回は第1回でした。
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