日本画や浮世絵には、数多くの幽霊が描かれてきました。世に広く知られた絵師たちも、幽霊やお化けの絵を手がけています。じんわり怖さが込み上がるものから、ひと目ですくみ上がる恐怖あふれるもの、どれもこれも、怖いもの見たさでついつい目が引き寄せられてしまう、こわーい幽霊たちを集めてみました。
猛暑の夏、幽霊画でゾクッとひんやり涼んでみませんか?
『宿場女郎図』月岡芳年
こちらは月岡芳年の作品。宿場町の宿屋の2階への階段を登るのは病でやせ衰えた女郎。生きながらも死んでいるような、骨と皮だけのような状態になってもまだお客を取ろうとする姿は、幽霊より恐ろしいかもしれません。
『幽霊画』月岡芳年
後ろ姿が艶めかしい幽霊は「産女(うぶめ)」という名の妖怪。妊婦が亡くなると妖怪になり、血染めの腰巻きを身につけ、子どもを抱いて現れると言われていました。姑獲鳥とも表記されます。
とても小さい赤ちゃんの足が背中越しにのぞいています。美しくも哀しい背中です。
『幽霊図』円山応挙
にんまりと微笑む口元には伸びた前歯が飛び出て不気味さが漂います。円山応挙は初めて足のない幽霊を描いた絵師と言われています。
『瞽女(ごぜ)の幽霊』三代目歌川広重
盲目の女旅芸人は瞽女(ごぜ)と呼ばれていました。三味線を抱え、やせ細った体で虚ろな目でさまよう幽霊は、怖さとともに悲哀を感じます。
『幽霊図』河鍋暁斎
細い下弦の月の下、生首をくわえた骨と皮だけの男の幽霊。やたらに目ヂカラが強くて怖いです。お願いだからこっち見ないで。生首からは霊気のようなものがぼんやりと漂っています。
『幽霊図』渓斎英泉
口もとからは血を流し、薄ら笑いを浮かべ、美人の生首を持った幽霊。生首の切り口からは血が流れ落ちています。見れば見るほど気味悪い幽霊です。
出典:福岡市博物館
『尾上梅寿一代噺 因幡之助』歌川国芳
右側に立つ女性の背後に幽霊。青みがかった顔色に黒い前歯、やせ細ってあばら骨が見えています。うっすら微笑んでいるような表情が不気味。
背後にひそむのは、岡崎の猫石妖怪。
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