本屋さんにはたくさんの本があふれ、お子さんに手渡す1冊に迷ってしまうことがありますよね。子どもの本を専門とする東京子ども図書館(中野区)の司書・床井文子さんが、最近出た本の中から、おすすめの3冊を紹介します。今日は、中学年からの1冊です。
『嵐をしずめたネコの歌』
作 アントニア・バーバー、絵 ニコラ・ベイリー、訳 おびかゆうこ、徳間書店、1836円
嵐の大ネコがあばれる海へ
マウスホールという名の小さな漁村に、ネコのモーザーが、年とった漁師のトムと暮らしていました。トムは魚をとると、モーザーのために料理します。月曜日は魚のシチュー、火曜日はマダラのオーブン焼き、というふうに。
ある冬、ふだんは美しい青緑色の海が、見る見るうちに黒ずんできました。モーザーは〈嵐の大ネコが、あばれだしたんだわ!〉と思いました。大波がきて、たくさんのつり船がしずみました。
でも、マウスホールの港は無事でした。嵐の大ネコは、高い防波堤をこえることができなかったのです。嵐がやまず、漁に出られないため、村には食べ物がなくなりました。
だれかが命がけで海に出るしかないと考えたトムは、モーザーと船に乗り、あれくるう海へ向かいます。ニギャーオー、ニギャーオー! 大ネコのかなしげな声を聞いたモーザーは、なぐさめようと心をこめて歌いました。モーザーの美しい歌声は大ネコにとどくのでしょうか。
イギリスの伝説をもとにした、不思議な絵物語です。
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次回配信では、高学年からの1冊を紹介します。
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