『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
「好き」を深掘りすると様々な仕事がみえてくる
大学は人生の途中経過に過ぎないから、東大といえどそこに入ることを目的に据えてはいけないと、柳沢校長は言う。
自分の人生の見取り図をちゃんと持て!という教えに聞こえるが、開成の生徒たちには日ごろ、そのあたりをどのように伝えているのだろうか。
「自分の足で立つことが何より大事だよということは、よく話しています。自律するには早いうちから具体的に自分の職業について考えてみるのがいい、とも促しますね」
とはいえ、彼らにとって働くというのは遠い将来の話。具体的に考えさせるのはなかなか難しいのでは?
「そうですね、ですからまずは、自分の好きなことを見つけなさいと説きます。次に、それに関連する職業をしっかりイメージしてみようと働きかけます。
たとえば、サッカーが大好きな子であれば、どんどん練習や試合に励めばいい。その先に、Jリーグやヨーロッパで活躍する選手になって、ワールドカップに出る道までひらけたら言うことなし。
ただ、トップ選手になるのはなかなか狭き門なのも事実。じゃあそこでサッカーで生きる道はあきらめるしかないのか?
そんなことはありません。選手がダメでも、サッカーに関連する職業はいろいろあるので、その道を模索します。
Jリーグのクラブに入社して広報に携わったり、総務として選手に帯同するのもいいでしょう。毎日サッカーの現場にいられますよ。
スポーツドクターになって、三浦知良選手のように50歳を過ぎてもボールを蹴っていられるような身体のケアをするのはどうか。
または国際弁護士になって、世界のチームを渡り歩く選手の契約アドバイザーになるのもあり。
サッカーシューズの開発、スタジアムの設計、芝の管理、マスコミに進んで報道をする、指導者になって次世代を育てる、ユニホームをデザインする……。
どんな仕事だって、ほかのいろんな仕事と密接に関わっているものです。好きなことを続けていける職業は、探せばいくらでもあるのです。
大学は「好き」をきわめる道の入り口
働く自分の姿がイメージできれば、そのために必要なことがおのずと見えてきます。
いまのうちに何を勉強すればいいのか、大学ではどんな学部に進んでどのような勉強をするべきか。目標とするのはどんなジャンルのものでもいいでしょう。
とにかく自分が好きで関心を持ち続けられる何かであれば。
好きなことをきわめる道への第一歩として、大学があるのだと捉えると、受験勉強も大学に入ってからの学びも、ずんずん前へ進むはずですよ」
柳沢幸雄 1947年4月14日生まれ。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の第一人者。開成中高卒業後、東京大学(工学部)、同大学院で学ぶ。民間企業で働いた後、ハーバード大学や東京大学などで環境分野の研究職に就く。2011年から現職。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『親が知っておきたい 学びの本質の教科書 教科別編』(朝日学生新聞社)、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
※柳沢幸雄先生のインタビューは、11月1、4、6、8、11、13日に全6回配信します。今回は第2回でした。
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