全国高校選抜大会は29日、各地で4競技が行われ、ハンドボールの男子で県勢の香川中央が決勝で高岡向陵(富山)に26―23で競り勝ち、9年ぶり3度目の優勝を飾った。
ハンドボール
(キッコーマンアリーナ)
▽男子決勝
香川中央 26(12―15)23
(14―8)高岡向陵(富山)
(香川中央は9年ぶり3度目の優勝)
〝波状守備〟で主導権奪還 19年間率いた監督を胴上げ
香川中央男子ハンドボール部を19年間率いた指揮官の体が3度、宙を舞った。今春、別の公立高校へ異動する河合監督に「優勝の胴上げをプレゼント」すること。その思いで一つになったチームは見事に平成最後の王者となり、監督も選手も喜びの涙に浸った。
高岡向陵との決勝は、3―3から司令塔田井らの5連続得点で波に乗ったかに思われた。だが、ここまで5試合で平均36点の攻撃力を誇る相手が逆襲。4連続失点で主導権を取り返され、前半を12―15で折り返した。
「シュート力がなく、守備でどれだけ頑張れるか」と河合監督が評する現チームが、真骨頂を見せたのはここからだ。パスカットを狙うけん制の動きを繰り返し、抜かれた後のカバーを徹底。GK大道は「全員がものすごい運動量。自分も位置取りを修正し、シュートを防げた」。全選手が足を止めず、粘り強く体を張る“波状守備”で後半はわずか8失点に抑えた。
一方の攻撃は、決勝まで4試合でいずれも2桁得点の木太が躍動。残り8分、21―21に追いつく同点弾を決めると「流れが来た。ここから自分の得点で突き放す」と集中した。速攻の中心となって終了前の約5分間で逆転を含む3点を挙げ、勝利に貢献。この試合計10得点の活躍で、大会最優秀選手にも輝いた。
就任後、2度目の日本一に導いた50歳の指揮官は「全国で1勝もできないのではと思っていたチーム。まさかの優勝。大会の中で成長してくれた」と感無量の様子。主将の田井は「厳しく鍛えられて、強くしてもらった。河合先生のため、夏のインターハイも優勝を目指す」と別の学校になっても、この恩師の期待に応えていくことを誓っていた。
「逆転して」声援熱く 生徒ら300人が生中継見守る
香川中央が全国高校ハンドボール選抜大会で3度目の優勝を飾った29日、高松市香川町の同校体育館では大型スクリーンで決勝戦が生中継され、約300人の生徒らが熱い声援を送った。
試合は序盤から一進一退の攻防。香川中央が得点したり好守備で相手のシュートを防いだりすると、生徒らは青いメガホンを打ち鳴らして大喜び。前半を終えて12―15とリードを許す展開だったが、河合監督が担任という2年の中沢冬聖さん(17)は「もっと点が取れる。逆転してほしい」と期待を寄せた。
願いが通じたのか、終盤にチームは逆転に成功。後半、残り2分を切ると生徒らは総立ちでエール。試合はそのまま終了し、会場は歓喜の渦に包まれた。
感動の幕切れに、香西新五教頭は「選手らの(異動する)河合先生に対する思いが優勝につながった。すごい底力だった」と頑張りをたたえた。
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