家庭や企業などから寄付された食品を並べ、必要な人が無料で持ち帰ることができる「無料スーパー」が東京都多摩市で開かれています。まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロスを減らす取り組みの一つで、だれもが参加できます。(編集委員・根本理香)
だれでも参加OK 「助け合い感じる」
無料スーパーは昨年9月に始まりました。家庭や企業で余っている食品の寄付を受けて、生活に困っている人に届けるフードバンクの活動をするNPO法人「シェア・マインド」が運営。全国で初めてだといいます。原則月1回、第1日曜日に開かれています。
昨年12月の開催日。開店は午前10時でしたが、8時から整理券100枚を配り始め、10時を少し過ぎたころにはすべての整理券がなくなりました。「スーパー」といっても、親子がくつろげるフリースペースのほんの一角です。5組ずつ10分の入れ替え制でした。ペットボトル入りの飲み物やお菓子、お米などが並んだ陳列棚から、1人3品まで持ち帰ることができました。
近くに住む主婦の前田愛里さん(35)は、1歳の娘と一緒に初めて訪れました。お米や調味料を手に入れ、「ありがたいですね。地域の人同士で助け合っている感じがするし、地域の活性化にもなりそう」。今回が2回目という会社員の鈴木克麻さん(28)とむつみさん(23)の夫婦は「余っているものを有効活用できる企画に共感しました」と、東京都武蔵野市からオートバイでツーリングを兼ねてやってきました。
日本では、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロスが年間621トン(2014年度推計)にのぼります。1人あたり1日ご飯茶わん1杯ずつ捨てているのと同じ量です。
捨てずに活用しようと、各地でフードバンク活動がさかんになりつつあり、シェア・マインドも2016年3月から取り組んでいます。ただ、「どんなふうに使えばいいのか、どんな条件があるのか」などの声も多く寄せられ、「活動が理解しにくいのでは」とシェア・マインド代表理事の松本靖子さん(36)は感じていました。
問題を身近に
昨年7月、オーストラリア・シドニーで「世界初」といわれる「すべて無料」のスーパーができたという新聞記事を目にして、「これならだれでも参加できて、食品ロスの問題やフードバンク活動をより身近に感じてもらえるのでは」と思った松本さん。早速、自分たちでもやってみることにしました。「だれにでも内容がすぐに伝わりやすいように」と、名前も「無料スーパー」にしました。
店に並べる食品を安定的に確保できるかなど、課題はありますが、将来的には常設の店を目指すといいます。
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