『うちのクラスの女子がヤバい』
大学の授業で学生さんに「少女マンガの定義を考えてみてください」とお願いすることがあります。「主人公の少女が恋愛をしていれば少女マンガだ」と答える人が多いのですが、最近は主人公が男子だったり、恋愛要素が薄かったりする作品もあるので、一概に「少女×恋愛=少女マンガ」とは言えなくなってきています。
少女マンガの定義って、案外難しいんですよね(だからこそ考える意味があるのですが)。
多様化の一途をたどる少女マンガに共通するものって、極端な話、「思春期の若者(特に少女)が魅力的に描かれている」以外にないのでは? と思っている今日この頃ですが、だとすれば『うちのクラスの女子がヤバい』は極めて少女マンガ的な作品です。
物語の舞台となっている高校には「思春期性女子突発型多様可塑的無用念力」略して「無用力」と呼ばれる力を持つ女子ばかりが集められたクラスがあり、彼女たちはみな「無害なうえに役にも立たない力」を持て余しています。
例えば、イライラすると手がタコの触手になるとか、食べると1日分の記憶が消えてしまうおにぎりが作れるとか。実に変ですが、いずれ消えてしまう力なので、言ってみれば、無用力とは、思春期女子の特権でもあるんですよね。
大人と子どもの真ん中で、自分自身に振り回される様子が人ごとに思えないのは、私も似たような思春期を過ごしてきたから。手がタコになったりはしませんでしたが(笑)、自分の心身を上手にコントロールできなくて苦しかった……しかし、そんな思春期も、過ぎてしまえば懐かしく輝かしいものです。
というわけで、変わり種ではありますが、思春期女子のままならなさが魅力的に描かれているという意味で本作もまた立派な少女マンガであると私は言いたい!
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トミヤマユキコ 1979年生まれ、秋田県出身。ライター、東北芸術工科大学講師。大学では少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。
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