沼田昌弘さん・樺沢紫苑さんが子育て術について対談
子どもたちが大人になるころは、人工知能(AI)に仕事を奪われる時代になるともいわれます。そうならないために、どんな能力が必要となるのでしょうか。
「『AIに使われない人間』をつくる子育て術」をテーマに、斬新でユニークな授業をする先生として知られる、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田昌弘さんと、精神科医の樺沢紫苑さんが先月、東京・池袋で対談しました。(浴野朝香)
「AIに仕事を奪われると考えている人は、時代の波にうまく乗れていない」と沼田さん。樺沢さんも「AIは道具なので使いこなすことが大切。うまく使えばいい結果を出せる」と応じます。2人ともAI時代の到来に前向きです。
AIを使う側の人間には、どんな力が求められるのでしょうか。「創造力や斬新なアイデア、パッション(情熱)を持っている人が成功する時代がくる」と樺沢さん。創造性を身につけるためには、アウトプット(外に出す)型の学習が大切だといいます。
「インプットするだけの受け身の勉強はAIがやってくれる。人間は考えたことを話す、書くといったトレーニングをすることが一番有効です」 沼田さんは、周囲が何でもやってあげる環境が、子どもがアウトプットするチャンスをつんでいるといいます。
「子どもが水をこぼしたら、親がふいてしまうのではなく、子どもにさせる。大人がやらない方が、子どもの力は伸びます」 2人は、子どもの長所をほめて、自己肯定感を持たせることの大切さについても話しました。
沼田さんは自身の体験から、子どもの得意なことをほめると、ほかの能力も上がることを紹介。
クラスのある男の子が、電車や新幹線のアナウンスを覚え、本物そっくりにまねができることをほめちぎってあげたら、学校の提出物も忘れずに出すようになったり、漢字のテストもよくできるようになったりしたそうです。
樺沢さんは、創造力を高めるために重要とされる「STEAM(スティーム)教育」についても紹介しました。STEAMとは、サイエンス(Science=科学)▽テクノロジー(Technology=技術)▽エンジニアリング(Engineering=工学)▽アート(Art=芸術)▽マセマティックス(Mathematics=数学)の頭文字を取った造語です。
STEAM教育は、問題解決や創造力を育むことを目的にこれらを統合して学ぶもので、アメリカで始まりました。近年日本でも注目されており、樺沢さんはその重要性を訴えました。
* *
樺沢紫苑 精神科医、作家。1965年、札幌生まれ。91年、札幌医科大学医学部卒。SNSなどで精神医学や心理学、脳科学の知識や情報をわかりやすく伝えている。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)など。
沼田晶弘 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。1975年、東京生まれ。同大教育学部卒業後、米インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。著書に『「自信が持てる子」の育て方』(あさ出版)など。
外部リンク