iPhone 11シリーズが登場するまでの2019年を振り返ると、iPhoneにとっては厳しい時期でした。2019年1月にAppleは利益警告を出し、ガイダンスよりも低い売上高を投資家に伝えました。
その後、iPad、Macといった既存製品のテコ入れ、そしてAirPods、Apple Watchの急成長によって、売上高としてiPhoneの穴を埋めて余りあるほどの成長ペースを取り戻しています。しかしながら、依然として主力製品であるiPhoneを放っておくわけにも行きません。
そのため、2020年は「iPhoneの年」にしようという目論見が透けて見えてきます。
ちなみに、2019年はiPadOSが登場し、iPad miniとiPad Airが久しぶりに刷新され、さらに廉価版のiPadがSmart Keyboardに対応するなど、iPadラインアップが完成した「iPadの年」だったと振り返ることができます。
同時に、Macについても、Mac Proの登場や16インチMacBook Proへのリプレイスなど、活発なモデルチェンジが起き、iPadをサブディスプレー化するSidecar、iPadアプリをMacアプリとしてビルドできるようにするProject Catalystなど、macOS Catalinaへの新機能も活発でした。
●iPhoneと連動するアップルのビジネス
iPhoneは最も多いときで、四半期ごとの売上高の7割を占める存在となっていました。そのiPhoneが不振になれば、業績全体に大きな影響を与えることは言うまでもありません。
前述の通り、特にウェアラブル製品の急成長で売上高は成長ペースを取り戻しているかもしれませんが、iPhoneをそのままにしておくことができない理由もまた存在しています。その理由はiPhoneの販売台数に、ウェアラブルとサービス部門が連動するためです。
もう少し正確に言えば、iPhoneによって獲得し増加するアクティブユーザーベースが、ウェアラブルデバイスをオプションとして購入する人や、App Store、iCloud追加ストレージ、Apple Musicなどのコンテンツサービスに消費してくれる人を作りだしているからです。
とくにサービス部門は、2020年までに、2016年の売上高を倍に成長させるという目標を設定しています。現在までのペースで行けば、その目標を達成することは可能だと考えられますが、ここでペースダウンしてしまうと、投資家にとっても、「スマホ飽和時代」にアップルの成長が封じられるというネガティブな印象を与えかねません。
しかしスマートフォンの成長がサービス部門の成長に関係している以上、スマホ飽和の市場環境の中でサービス部門を成長させることは難しくも思えるのですが……
●iPhoneの年、皮切りは廉価版?
iPhoneの年、2020年の皮切りとなりそうなのが、廉価版のiPhoneです。2019年からその登場が指摘されており、昨年10月に本連載でも採り上げました。
その際に、どんなiPhoneになるのか、について前例から次のように予測しました。
- 2016年登場のiPhone SEが、
- その時点で最新機種だったiPhone 6sの性能を、
- 2年前のiPhone 5sのボディに詰め込んだ
- 400ドル以下のスマートフォン
として登場していましたので、2020年に登場するiPhone SEの後継モデルも、
- A13 Bionicと1200万画素カメラを搭載し
- 2年前、2017年モデルのiPhone 8のボディを活用した
- 400ドル以下のスマートフォン
と予測したのです。
BloombergはA13 Bionicチップの製造を担当するTSMCが、増産の発注を受けたことを報じました。
その前日の記事で、Bloombergは廉価版iPhoneが2月に量産を開始することを伝えており、「A13 Bionicを廉価版iPhoneに採用するのではないか?」という筆者の予測と重なる部分もありそうです。
●廉価版もFace ID対応にしてほしい
ただ、iPhone 8のフォームファクターにはFace IDを実現するTrueDepthカメラが搭載されておらず、A13 Bionicに搭載されるニューラルエンジンがなくても、指紋認証によるロック解除が実現できます。だからといって、いまさらA10 Fusionチップを採用するiPhoneを登場させても、競争力があるか疑問です。
この辺りは、まだまだ意見が分かれるところなのではないかと思いますが、期待も込めて、A13 Bionicチップ搭載で廉価版iPhoneを作ってほしい、と思いました。その一方で、A13 Bionicを搭載するなら、Touch IDではなくFace ID対応の製品として実装してはどうか、と欲張りな気持ちも生まれてきます。
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