新元号「令和」を考案した中西進大阪女子大元学長(90)の講演会が25日、坂出市沙弥島の市万葉会館で開かれた。沙弥島は柿本人麻呂が長歌を詠んだと伝わる“万葉の島”。万葉集研究の第一人者である中西さんは、「わたつみ(海神)」の語が詠み込まれた歌の背景をひもときながら、日本人と海の関わりをユーモアあふれる語り口で解説した。
中西さんは日本古典が専門で2013年に文化勲章を受章。現在は奈良県立万葉文化館名誉館長などを務め、万葉集を典拠に新元号を考案したことで脚光を浴びた。
この日の講演会は、中西さんの支援者らでつくる「中西進と21世紀を生きる会」(事務局・福井市)が主催し、坂出市教委が共催。改元後、県内で講演するのは5月の高松市内に続いて2回目で、約260人が聴講した。
演題は「わたつみ(海神/海若)」。中西さんは両親が香川県出身で「私の心の根源には香川がある。顔も“香川顔”でしょう」と自己紹介し、「香川は海を外しては考えられない県。わたつみ、つまり海の神様について考えることが大切」と訴えて講演を始めた。
「万葉集が茶の間にあるかどうかで、ご家庭の文化度が分かりますよ」などと会場を笑わせつつ、「わたつみ」の語を詠んだ歌を紹介。「万葉集の初期の歌で、海は『占い』『祈り』の対象だったが、やがて『幻想』の対象となり、芸術の源泉となった」と持論を展開。「おそらく、日本人の美意識は万葉の頃に完成されただろう」と強調した。
講演後、会場から「令和」について解説を求められると、「私と同姓同名の方が話題になっているだけです」と煙に巻いた。