定期的な乳がん検診を受けていますか?10月は乳がんの早期発見や検診の受診を啓発する「ピンクリボン月間」です。乳がんになる人は30歳くらいから増え始め、40代後半で最初のピークを迎えます。
「痛くないの?」「費用は?」など、検診についてのさまざまな疑問を、朝日小学生新聞ママ読者リポーター(以下、朝ママ読者リポーター)が昭和大学病院(東京都品川区)の乳腺外科医、井手佳美先生に聞きました。(取材・文/永井美帆 撮影/土居麻紀子)
日本人女性の11人に1人がかかる乳がん。乳房にできる悪性腫瘍で、多くの場合、母乳を乳頭まで運ぶ乳管から発生しますが、がんが進行して他の臓器に転移すると、命にも関わります。
患者数はここ15年で2倍になり、増加しています。「高齢出産や出産しない女性が増えていることと関連があるといわれています。しかし、早期であればほとんどが治る病気です。定期的に検診を受けることが大切です。」と井手先生は話します。
超音波とマンモ併用して早期発見
検診には、胸に超音波をあてて調べる超音波検査(エコー)と、乳房を押さえてX線撮影をするマンモグラフィーがあります。マンモでは20~30代の若い世代など、乳腺が発達している人は検査画像が白く見え、同じく白く映し出される腫瘍を見つけにくいため、超音波が推奨されています。
しかし、超音波検査での診断は医師や検査技師の技術に左右される部分があるなど、それぞれにメリット、デメリットがあります。
現在、厚生労働省の指針では「40歳以上の女性は2年に1回のマンモグラフィー検査による検診が適切」とされていますが、同省の調査によると受診率は50%以下と低い水準です。自治体や職場の検診であれば自己負担なし、もしくは数百円~2千円程度で受けられます。
「40代は仕事や子育てなどに忙しい世代だからこそ、検診を受けてください。2年に1回といわず、可能な限り毎年検診を受けることをお勧めします。3親等以内の親族に乳がんになった人がいる場合はリスクが高まるため、30代でも検診を受けましょう」と井手先生。
さらに、「40~50代でもマンモだけでなく、超音波検査を併用することで、早期発見の可能性が高まる」と言います。全額自己負担で受ける場合、医療機関によって異なるものの、超音波とマンモをあわせて1万円ほどです。
朝ママ読者リポーターは、30代後半から超音波とマンモによる検診を交互に受けてきたそうです。「マンモは胸を圧迫するので、痛みを感じることもありますよね?」と井手先生に尋ねます。
「痛いと言っても、検査にかかる時間はほんの数十秒です。痛みを少なくするには、乳房の張りが強くなる月経前は避け、月経後に受けるといいですよ」
自分で胸を触って、月1回のセルフチェック
年1回の検診に加えて、月1回のセルフチェックも大切です。仰向けになって、指の腹で押すように乳房やわきの下に触れ、固いしこりがないかをチェックしていきます=(下イラスト)
「月経後など、タイミングを決めて日頃から胸を触り、自分の胸の感触を知っておくことが大切です」と井手先生。異常を感じたら1週間後に再び触ってみて、まだ異変があれば病院を受診しましょう。
「乳がんはデリケートな部位の病気なので、1人で悩むことも多いと思います。早期に発見すれば決してこわい病気ではないので、定期的な検診を心がけてくださいね」
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教えてくれたのは… 昭和大学病院乳腺外科 井手佳美医師。浜松医科大学医学部卒業。日本乳癌学会乳腺専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、検診マンモグラフィー読影認定医師。
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