空からのたより
朝起きて、その日に着ていく服を選ぶとき、天気予報を参考にすることがありますよね。でも、天気マークと気温だけをチェックして終わりという人が多いのではないでしょうか。実は、服選びを成功させるためには、「風」が意外と大事なのです。
私たちの体は、体温によって皮膚の周りの空気を暖めています。この暖まった空気の層が寒さを防ぐ役割をしているのですが、風がふくと冷たい空気が直接肌にあたります。そのため気温が同じ場合でも、風が強いときはそうでないときよりも寒く感じるのです。このように実際の温度とちがって、私たちの体が感じる温度を「体感温度」といいます。
どのくらい風が影響するかというと、風速が1メートル増すごとに体感温度は約1度下がるといわれています。例えば、10月下旬の東京の最高気温は平年だと20度くらいですが、そこに木の葉がゆれる程度の風(風速約5メートル)がふくと、実際に体が感じる気温は15度、木全体がゆれ動くような強い風(風速約10メートル)では10度ということになります。20度だと長そでのシャツやブラウス1枚で過ごせると思いますが、10度になるとコートがないと寒いでしょう。そう考えると、風の影響もあなどれません。
秋が深まると、日本列島の上空にたびたび寒気が入るようになって、太平洋側の地方では冷たい北風がふく日が増えていきます。そのような風は木の葉を落とし、枯らしてしまうことから「木枯らし」と呼び、その秋初めてのものは「木枯らし1号」として気象庁から発表されます。観測しているのは東京と近畿地方だけですが、そのほかの太平洋側でもふきます。
木枯らし1号の後は数日おきに木枯らしがふき、その間隔がだんだんせまくなって、毎日のようにふくようになったら本格的な冬が訪れます。つまり、木枯らし1号の便りは「そろそろ冬じたくを始めるといいよ」というサインです。
天気予報で「木枯らし」と聞こえてきたら、体感温度のことを思い出して、気温の数字でイメージするよりも厚手の服や風を通さない素材の上着を選んでくださいね。
参田佳織さんだ・かおり 日本気象協会気象予報士 香川県出身。2004年から7年間、ラジオやテレビで気象解説を担当。現在は、新聞のコラムなどを執筆している。
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