自分の体が思うようにならない...、そんな違和感がありませんか? 女性は特に40代以降、更年期や閉経という新しいモードに入っていく過程で、なんらかのトラブルはつきものです。そこで、『マリ先生の健康教室 オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(常喜眞理/すばる舎)より、女性家庭医である著者が提案する、それぞれの年代で起こる女性の体の変化への「上手な対応策」をお届けします。
いま、医療機関で更年期対策としてできること
更年期障害対策を聞いて「深呼吸? ヨガ? おしゃべり? こっちはそれどころじゃないんです!」と、憤ってる方もいるかもしれません。
しかし更年期障害が自律神経失調症である限り、副交感神経を刺激することが治療の王道であることは気に留めておいてください。
いかにして、自分をリラックスさせる状態をつくれるか。
ただし不快な症状が我慢できないレベルなら、かかりつけ医に相談するのがいいでしょう。
更年期障害はこじらせるのが一番よくありません。
現在、行われている代表的な治療をご紹介します。
漢方薬治療
体質に合えば体調全般が快調に。ただし副作用ゼロではないことをお忘れなく
更年期治療に使われる漢方は、主に次の3種類。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
いずれも血(けつ)の巡りをよくすることで、体のバランスを整えようというものです。
どれが自分に合っているかは、それぞれの体質にもよるので一概には言えません。
かかりつけ医と相談しながら、体の状態をチェックしてもらった上で、試行錯誤していくことになります。
●効果と副作用
効果のあるなしは2週間ほどでわかりますので、もし効かなければ薬を替えることになります。
ところで、たまに「漢方は西洋薬と違い、いくら飲んでも副作用がないから安心」という方がいますが、それは大間違い。
漢方も薬ですから、しっかり効果もあれば副作用もあります。
そもそも西洋医薬は漢方の成分を人工的につくったものですから、基本は同じです。
そのため、特に体に異常がなくても、長く飲み続ける場合には3~6ヶ月に一度は血液検査をして、副作用をチェックすることをおすすめします。
症状が落ち着いた頃から、徐々に薬を減らしていくのがいいでしょう。
ホルモン補充療法(HRT)
足りないなら足せ、というストレートなアプローチ
更年期障害の直接的な原因が女性ホルモン(エストロゲン)の低下なら、手っ取り早くエストロゲンを足してやれ、というのがこの治療法です。
ホルモン値は血液検査で調べることができます。
主に錠剤タイプとテープやパッチタイプがあり、テープやパッチは2日間貼りっぱなしにするので、薬のように飲み忘れはないのですが、肌の弱い方はかぶれることがあるかもしれません。
以前はエストロゲンだけを投与したため、子宮体がんのリスクが高まるなどの副作用が報告されましたが、近年は黄体ホルモンを併用することで回避されています。
基本的には更年期前期、つまり閉経前に投与することで、以前どおりの子宮の状態や生理を保とうとするものですが、閉経後に不快な症状が現れた方にも有効な場合があります。
治療を希望する場合は、かかりつけ医としっかり相談することが必要です。
●効果と副作用
投与の最初の頃は吐き気を伴ったり、5~6ヶ月は不正出血が続く場合があります。
最初の投与から不快な症状が改善される方もいますが、すべての方に効果があるわけではありません。
また、血栓(けっせん)症や心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中(のうそっちゅう)になったことがある方、肝臓病の方などには適しませんので、詳しくははかかりつけ医にご相談ください。
では症状が改善されたとして、このホルモン補充療法はいつまで続ければいいのでしょうか?
これは難しい問題です。
アメリカなどでは不定愁訴対策というより、美容目的や女性らしくあるために、80歳を過ぎても飲み続ける方もいて、最近ではこの考え方も普及しています。
ただ、あくまで私の個人的な意見としては、いまのところ5年くらいを目安にしたほうがよいと考えています。
しかしそれも、個々の状況によって違うでしょう。やはり、かかりつけ医とよく相談することが必要です。
西洋薬治療(抗不安薬など)
不安や緊張を和らげて乗りきるという考え方
こちらは精神的ストレスを和らげることで、不快な症状を緩和しようという治療法です。
抗不安薬、軽い抗うつ薬、催眠鎮静薬などが処方されます。
更年期の不快な症状は、再三申し上げたように女性ホルモン(エストロゲン)の低下からくる自律神経失調症が原因ですが、これに個人的なストレスや気質・体質が複雑に絡み合ってきます。
人によっては、落ち込み、イライラ感、パニック症状、不眠状態となり、耐え難いレベルになる方もいます。
その場合は、こういった薬で切り抜ける作戦もありでしょう。
●効果と副作用
不調を根本的に改善するものではありませんが、不調をきっかけにひどくなりがちな症状を和らげてくれます。
適正な使用をすれば世間で考えられているほど心配な薬ではありません。
かかりつけ医とよく相談しましょう。
個人的には何も手立てがなく我慢するよりは、「いざというときにはこれがある」とお守り的な気持ちで持っているほうがよいと思っています。
40代~70代まで、年代別に表れる症状の解説や、それに対する具体的な対応策を紹介。女性家庭医として著名な著者が、わかりやすく解説してくれる一冊です。
常喜眞理(じょうき・まり)
家庭医、医学博士1963年生まれ。常喜医院の院長としての診療とともに、慈恵医大新橋健診センターでは診療医長として、婦人科や乳腺外科の診察結果を総合的に最終診断する立場を担っている。テレビの健康番組にも多数出演。