小豆島町中山地区に江戸時代から300年以上にわたって伝わる農村歌舞伎が13日夜、同地区の春日神社境内にある木造の「中山の舞台」(国指定重要有形民俗文化財)で奉納された。地元住民らが渾身(こんしん)の演技を披露し、桟敷席を埋めた約500人の観客を魅了した。
奉納歌舞伎は、中山自治会(井口平治会長)と中山農村歌舞伎保存会(久保政会長)が毎年この時期に実施。小豆島にはかつて30を超える歌舞伎舞台があったとされるが、現存するのは中山地区と、毎年5月に上演している土庄町肥土山地区だけとなっている。
舞台は祝いの舞「三番叟(さんばそう)」で幕開け。続いて「白浪(しらなみ)五人男」として知られる「青砥稿(あおとぞうし)花紅彩画(はなのにしきえ) 稲瀬川勢揃(いなせがわせいぞろ)いの場」を小学2~6年生9人が熱演。それぞれが小気味よく名乗りを上げ、軽快に立ち回りを披露すると、桟敷席からは大きな拍手とともにおひねりが投げ込まれた。
大人の役者たちは、最終4幕目で武将佐々木信胤(のぶたね)とお妻(さい)の局(つぼね)の悲恋の物語「小豆嶋(しょうどしま)」を情感たっぷりに演じた。小豆嶋にちなみ、同町安田地区に伝わる郷土芸能「安田おどり」も披露された。
桟敷席には地元の家族連れらのほか、瀬戸内国際芸術祭を目的に来島した観光客の姿もあり、それぞれ弁当を味わうなどしながら秋の夜を楽しんでいた。