「私は目にはわからない病気を患っています」「たまに老人の方から席を譲れと怒鳴られることも多々あります」
そんなひとりの女子高校生のツイートが今年1月、拡散した。18歳の彼女が少しでも多くの人に伝えたかったのは、「ヘルプマーク」の存在だった。
私は目にはわからない病気を患っていますその為ヘルプマークをみにつけて優先席に座ることもあります。
— かえで。 (@Kaede_2746) January 11, 2020
たまに老人の方から席を譲れと怒鳴られることも多々あります。
私以外のヘルプマーク所持者の方同じ思いをされないように拡散よろしくお願いします。#ヘルプマーク#拡散希望#RT希望 pic.twitter.com/qdj8h6CNQS
「ヘルプマークに救われています。なかなか見た目じゃ理解してもらえないから、辛いことも多くて…」
そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、かえでさん。SNS上に「ヘルプマーク」をつけているポートレートを掲載することで、その認知度を高めていこうと活動する「アイリス+♡」のメンバーだ。
かえでさんは、過去に性被害を受けたトラウマから、解離性同一性障害などを患っている。フラッシュバックにより、過呼吸になるだけでなく、その場で倒れてしまうこともある。見た目では伝わらない病気のひとつだ。
「優先席に座っていたら、おばあさんに怒鳴られたこともあります。説明したんですけど、理解はしてもらえませんでした」
ヘルプマークをつけ始めたのは2年ほど前だった。
「見た目でもわからないから、付けるのには勇気がいりました。どう思われるんだろうとか、嘘をついているんじゃないかと思われたくなくって…」
見えない障害のこと、知ってますか
そもそもヘルプマークとは何か。外見からは分からなくても、援助や配慮を必要とする「見えない障害」を抱える人たちが、自身の状況を伝える、ひとつの手段だ。
心臓機能障害などの内部障害や、言語障害、自閉症を抱えている人、義足や人工関節をつけている人、妊娠初期の人などに向け、東京都が2012年に作成し、徐々に全国に広がっている。
マークの裏には、病状と緊急連絡先を記すことができる。かえでさんも路上で倒れたとき、マークのおかげで助けてもらえた経験があるという。
徐々にマークの存在が伝わり、声をかけられる経験があるとはいえ、認知度の低さを痛感することもある。学校の教員や、医療従事者でも知らない人がいたことには驚いた。
「もっと多くの人に知ってもらいたい。そう思って、『アイリス+♡』の活動に参加するようになりました」
かえでさんのツイートは、約8万リツイートされるほどの話題を呼び、多くの反響があった。
「おなじように病気を抱えている人から、『私もつけてみたいと思います』と連絡があったときはとても嬉しかった。ヘルプマークを通じて、誰にでも優しく、手を差し伸べやすい世の中になってほしいと思っています」
まだネガティブなイメージも
かえでさん(左)とみんみんさん
「ヘルプマークは認知度が低いだけではなく、まだまだネガティブなイメージもあるんです」
そう語るのは、「アイリス+♡」の代表、愛迷 みんみんさん(24)だ。幼い頃に患った小児癌の放射線治療の影響で、心臓や肺に疾患を抱えている。駅の階段をのぼっただけで息苦しくなり、満員電車でも動悸が走りやすい。
団体をつくったのは、病気を抱えている人にも、そうでない人にもヘルプマークが浸透してほしい、という思いがあるからだ。みんみんさんは言う。
「私自身、ヘルプマークをつけ始める以前から、嫌な思いをしたという経験を何度か聞いたことがありました。だからどこかで、私もつけることに抵抗感を持っていた。同じような悩みを抱えてる方は、きっとまだまだたくさんいらっしゃると思っています」
『活動を通して、マークを知らない方にはもちろん知ってもらいたいし、見えない病気を抱えた方には、自分の身体を守るためにも積極的に身につけてほしい。私たちの存在が少しでも多くの方の背中を押せるように、伝えていきたいと思っています」
誰かの希望になるために
愛迷みんみんと申します。
— アイリス+♡ (@portrait_iris) January 30, 2020
毎日DMを読んでます。沢山の方がヘルプマークを所持していて嫌な思いをされたんだと言うことに胸を痛めています。ヘルプマークを所持していている者同士、私達は仲間です。決して1人ではありません。
アイリス+♡は日常の困難に負けずに頑張っている貴方を応援してます。 pic.twitter.com/umDLo0KJp3
趣味でポートレートをしていたことがきっかけで、自分が持ってるヘルプマークを組み合わせて発信するというアイデアを思いついた。SNSで投稿したところ、呼びかけに応じてくれた人たちとつくったのが「アイリス+♡」だ。
全国各地から10〜20代の6人の女性たちが参加している。線維筋痛症やてんかん、ADHDなど、抱えている病気はそれぞれだという。
「なかには病気でモデルになる夢を諦めてしまった子もいるんです。見えない体の障害によって、夢を諦めなければいけない女の子たちが、世界にはいる。その世界を変えたいと思っています」
「そうして、病気や障害を持っている人たちが輝ける場所をつくりたい。私たちの活動が同じように病に苦しんでいる誰かの、希望になったらいいなと、思っています」
2月には、新たなメンバーを募集したばかり。今後は写真集をつくったり、各地で講演会を開いたりしながら、活動の幅を少しずつ広げていきたいという。