新元号「令和」の発表で県内でも様々な動きが出ている。新元号の出典となり、にわかに注目を集めている日本最古の歌集「万葉集」。県内の書店でも、関連書籍の品ぞろえを充実させようと、追加で発注を掛けたり、急きょコーナーを設置したりと対応を急いでいる。
県内書店 特設コーナー
宮脇書店本店(高松市丸亀町)では、入り口近くの棚に改元や皇室などに関する書籍を集めているが、新元号の決定から一夜明けた2日、「令和」の文字や由来などを記したポップを掲示するとともに、万葉集関連の本も加えた。
在庫が少なかった上、万葉集を収録する全5巻の文庫本のうち、引用された一節が掲載されている巻は新元号発表後に売り切れるなど、品薄状態。両親が県出身で万葉集研究の第一人者の中西進氏の著書も発注したが、入荷には1週間程度かかる見込みという。
同店の担当者は「今月半ばごろには品ぞろえを増やせそう。これを機に万葉集への関心が高まれば」と話していた。
ジュンク堂書店高松店(同市常磐町)も、万葉集の関連本を発注しており、納品され次第、平成の時代を振り返る本を集めたコーナーに並べる予定だ。同店は「改元を通じて日本固有の文化を見つめ直すきっかけになるのでは」としている。
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「万葉の島」注目を期待
坂出市の沙弥島は歌聖・柿本人麻呂が船を着けた際、歌を詠んだことで知られる「万葉の島」。新元号「令和」の出典が万葉集だったことに、有志でゆかりの地のガイドや研究などに取り組んできた同市西大浜北の中山博道さん(79)は「万葉ファンとしてはうれしい限り。風流で文化の香り漂う元号と思う」と声を弾ませる。
沙弥島の浜には柿本人麻呂碑が立つ。「玉藻よし讃岐の国は国柄か―」。同市出身の作家・中河与一が、小さな島を万葉歌に取り上げた人麻呂を絶賛して1936年に建立したもの。その後、市が瀬戸大橋開通を機に「万葉の島」としてPRするようになった。
島では毎年、人麻呂の歌とともに煎茶を味わう「万葉茶会」、万葉の暮らしを体験する「沙弥島万葉まつり」が開催される。中山さんは「県内で万葉歌が詠まれたのは坂出だけ。新元号を機に、坂出市や沙弥島があらためて注目されれば」と期待を込めた。
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早くも新元号グッズ
「令和」を取り入れた商品の製作も始まっている。令和の文字を刻印したキーホルダーなどを製作した木材会社や、カレンダーへの新元号の印字を開始した印刷会社など、歴史的な節目をビジネスチャンスととらえた動きが広がる。
木材市場を運営する太洋木材市場(高松市)は、発表直後の正午ごろから作業に取り掛かり、キーホルダー3種類と3枚1組のコースターを製作。キーホルダーは切符をモチーフに「平成↓令和」と彫ったものや、大きく「令和」と入れたデザインなどがあり、コースターには出典の万葉集の一節も刻印した。
同社のほか、インターネット通販でも販売する。樋口一真取締役室長は「後発と思われたくなかったので、いち早く作った。話題づくりに使ってくれれば」と笑顔で話していた。
5~12月の1カ月分のカレンダーをそれぞれ名刺サイズ1枚に印刷した商品を企画している中央印刷所(同市)ではこの日、元号のスペースを空けて待機。発表の瞬間を見守っていた社員らは、新元号の決定に合わせて「令和」の二文字の印刷に取り掛かった。
林幸春社長は、販促用カレンダーとして企業や商店からの需要を見込んでおり「新元号の明るいイメージにあやかり、景気も良くなれば」と期待していた。