あなたに手紙を書きます。めがねがきらいなあなたに手紙を書きます。
私がめがねをかけたのは、高校1年の時でした。教室の後ろの席に座っていたら、黒板の字がぼやけて見えたのです。視力検査をしたら、めがねが必要と診断されました。その時から今日まで、ずっとめがねをかけて生活をしています。
初めてめがねをかけた時は、はずかしかったのを覚えています。自分の顔じゃないような気がしました。転んでガラスを割ったこともあります。どこかに忘れてずいぶん困ったこともありました。ずっとめがねが好きになれませんでした。
でもね。大人になって、みなさんの前で授業をやるようになって、少し考えが変わりました。大勢の児童や生徒を前に授業をしていると、時々、眉間にしわを寄せ、にらみつけるような顔でじっとこちらを見ている子がいます。
明らかに視力が落ちているようです。こわい顔をしてこちらを見ているので、すぐにわかります。
一方、めがねをかけている子は、表情もおだやかです。ちょっと知的に見えます。黒板の文字が見えなくて、しかめっ面をしているよりも、ずっとかわいいし、カッコいいと思います。
黒板の字が見えにくいと思ったら、先生や親にちゃんと相談しようね。目が悪いと授業中つらいし、危険です。きらいだなんて言わないで、ちゃんとめがねをかけましょう。あなたがかけるのだから、かわいいにきまっていますよ。
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ひきた・よしあき 博報堂のスピーチライター、博報財団コミュニケーション コンサルタント。
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