アップルは何度かプラットホームやフォームファクターを大転換してきました。直近ではMacのPowerPCからIntelへの転換、iPhone/iPadのホームボタン廃止が記憶に新しいところです。
iPhoneやiPad Proからヘッドフォンジャックが取り除かれたことも、最近の変化でした。
アップルはiPhone 7でヘッドフォンジャックを廃止して、Lightning接続の有線イヤフォンマイク、EarPodsを付属させるようにし、加えてワイヤレスイヤフォンのAirPodsを発売しました。いわば、接続しないアクセサリを登場させ、ヘッドフォンジャックの有無に関わらず、こちらは製品としての大成功を収めました。
このことを頭の片隅に置きながら、今回のテーマについてです。
●Lightning廃止が近づく?
2021年にはiPhoneからLightningコネクタが廃止される可能性があるとのことです。じゃあ変わりは何になるのか?という疑問に対して、多くの人は「USB-C!」と答えるかもしれません。
実際、iPad Proには2018年からUSB-Cが採用されました。個人的に色々試した結果、割となんでもつながる、というのが感想です。メモリカードやUSBメモリ、キーボード、マウス、ヘッドフォン端子付きのUSBコンデンサマイクなど。大抵の場合、USB-Cハブを介して電源と複数のアクセサリを接続しているのですが。
アクションカメラ、ミラーレス一眼など、USB-C端子を備えるアクセサリが手元にも増えてきているので、iPhoneがUSB-Cになってくれても一向に問題ありません。ケーブルはだいぶ買い足す必要がありますが…。
しかし、そうした夢は打ち砕かれる可能性があります。全く違う新しい独自規格、Smart Connectorになるかもしれない、とアップルリーカーのFudgeは言うのです。すでに篠原さんがASCII.jpでも伝えています。
これまでも、iPhoneのリーク情報にSmart Connectorの影が写った画像は出回っていました。しかし少なくとも2019年登場のiPhone 11は、これまで通りLightning端子を搭載し、Lightning - USB-Cケーブルを使うことで、最大18Wの急速充電に対応することができています。
●フルワイヤレスの世界?
現在iPhoneを最も速く充電する方法は、Lightning端子とUSB-PDに対応する充電器を使う方法です。前述の通り最高18W。iPhone 11には5W充電器しか付属しないためフル充電しようとすると2時間以上の差が出ます。
もしLightning端子をなくすのなら、それ以外の方法で18Wもしくはそれ以上のスピードでの充電を実現しなければ「性能悪化」ということになってしまいます。
おそらく今後も採用され続けるであろうQi規格のワイヤレス充電、現在のiPhoneでは7.5Wに制限されており、それでも標準の充電器よりは速いため「高速ワイヤレス充電」という表現をアップルは採用しています。
Qi規格では現在15Wまでの高速充電に対応しており、将来的には120Wまで拡張するとされています。2021年モデルのiPhoneが登場するまでに、iPhoneが15Wもしくはそれ以上の高速ワイヤレス充電をサポートしてくるかもしれませんが、18Wの壁をいかにクリアするのか、別のより信頼性の高い道筋を用意しておく必要があると思います。
●最近驚いたSmart Connectorの仕様
さて、Smart Connectorは2015年に登場したiPad Proで初めてお目見えした規格です。3つの接点を持ち、iPad Proでは当初、Smart Keyboardを接続してタブレットにタイピング環境を提供しました。
Smart Connectorによりキーボードを接続することで、ソフトウェア的にわずらわしいペアリングや接続をする必要がなく、セキュリティ面でも優れているため、ビジネスユースには必要な要素だったと言えます。
その後、Smart ConnectorはiPad mini以外のあらゆるiPadラインアップに採用され、キーボードにも対応できる新しいコンピュータ像の確立に貢献しました。
ただ、我々はSmart Connectorについて、単に「iPadをキーボード接続するための端子」としてしかとらえていませんでした。そうではない、と気づかせてくれたのが、2020年に登場したiPad Pro用Magic Keyboardです。
Magic KeyboardとiPad Proは、これまでのSmart Keyboard Folioと同じように、iPad Pro本体背面にある3つの接点、Smart Connectorで接続します。もちろんSmart Keyboardと同じようにキーボードが使えるようになりますが、Magic Keyboardはバックライト付きで点灯します。
加えてキーボードだけでなく、マルチタッチに対応するトラックパッドを利用することができます。つまり、キーボード以外のアクセサリとの通信、これらに給電ができるようになるのです。まずこの時点で、「えー、そうだったの?」と思ったのです。
さらにさらに、Magic Keyboardの左ヒンジ部分にはUSB-Cポートが用意されており、ここにACアダプタを差し込んでiPad Pro本体に給電できる仕組みを備えていたのです。
ここまで書いてきて、おそらく筆者と同じ結論にたどり着いたのではないか、と思います。
「あ、これ、形が違うけど普通のUSBだ」