10月は乳がん啓発月間。乳がんは日本人女性にとって最も罹患率が高いがんとされていますが、日本だけのことではありません。世界で活躍する女優やシンガーなど、著名セレブたちも乳がんの闘病経験を告白しています。彼女たちはどのようなことを感じたのでしょうか。2013年にアンジェリーナ・ジョリーが『ニューヨーク・タイムズ』に寄稿した手記をはじめ、セレブたちの体験談をお届けします。
アンジェリーナ・ジョリーの手記~母親をがんで亡くして
「私の母は約10年間がんと闘い、56歳で亡くなりました。最初の孫と対面し、その腕に抱くことはできましたが、他の子供たちは私の母に会うこともなく、彼女がどれほど愛情深く、優しい人だったのかを知ることはありませでした。私たちは『ママのママ』について話し、彼女がどのような病気で亡くなったのかについて説明しています。すると子どもたちは、私にも同じことが起こるのかと聞いてきました。私はいつも『心配ない』と答えますが、本当のところは、私は乳がんや卵巣がんを発症するリスクを高めるBRCA1という遺伝子を持っています。主治医によると、私が乳がんになる確率は87%、卵巣がんになる確率は50%とのことでした。遺伝子の突然変異に起因する乳がんはごく一部で、BRCA1に欠陥がある人は平均で65%程の(乳がんを発症する)リスクがあるそうです。これが私の現実だと知り、私は積極的に、リスクを最小限に抑えようと決断しました。予防のために、両乳房の切除術を受けることにしたのです。乳がんのリスクは卵巣がんのリスクよりも高く、さらに手術も複雑なので、胸の手術から始めることにしました」
乳房切除を含む治療は3カ月
「4月27日、乳房の切除術を含む3カ月間の治療を終えました。その間、私はこの事実を隠し続けることができ、仕事をすることもできました。しかし、私の経験が他の女性たちの役に立って欲しいと思い、今この記事を執筆しています。『がん』とはいまだに人々の心に恐怖を与え、深い無力感を生み出す言葉です。しかし、現在では、乳がんや卵巣がんになる可能性を血液検査で調べることができ、対処することも可能です。私自身の治療は2月2日に“nipple delay”という治療から始まりました。これは、乳首の後ろにある乳管から病原と余分な血管を取り除くものです。これにより、ある程度の痛みと多くの痣ができますが、乳首を保存できる可能性は高くなります。その2週間後、乳房組織を切除し、代替の詰め物をするという大きな手術を受けました。その手術は8時間かかります。目が覚めると、胸にドレーンチューブやエキスパンダーが繋がれていて、まるでSF映画のようでした。それでも、数日後には普通の生活に戻ることができます。9週間後、インプラントで乳房を再建し、全ての手術が終えました。この処置はここ数年で大きく発展しており、その結果は美しいものです」
手術がもたらしたのは、家族の絆
「私は、この記事を書いて、乳房切除術を受けるという決断は簡単ではないということを伝えたいと思っていました。しかし、私はその決断をすることができて心から幸せです。乳がんを発症する可能性は87%から5%まで下がりました。私は子供たちに、乳がんで私を亡くすことを恐れる必要はないと伝えることができます。子供たちを不安にさせるものがなくなったことにも安心できます。小さな傷は見えますが、それだけです。それ以外はいつも通りのお母さんのままです。子供たちは私が彼らを愛していること、彼らとできる限り長く一緒にいるためには何でもすることを知っているでしょう。個人的には、女性らしさを失ったようにも感じていません。女性らしさを失うことはない強い決断で、より力を得ることができたように思います」
全世界の人が、予防治療を受けられるように
「この記事を読んでくれた女性たちには、選択肢があることを知っておいて欲しいと思います。全ての女性、特に、家族に乳がんや卵巣がんの病歴があるという人たちは、情報を、そしてあなたを助けることができる医療関係者を探してください。そして、得た情報をもとに自分で選択してください。手術に代わる方法に取り組む多くの素晴らしい医師たちもいます。私自身の養生法はPink Lotus Breast Centerのウェブサイトに掲載されています。これが他の女性の役に立てれば何よりです。私が自分の話を公にすることを選んだのは、がんの影の下で生きているかもしれないことに気づいていない女性が、たくさんいるはずだからです。その彼女たちも遺伝子検査を受けることができ、もしリスクが高い場合はしっかりした選択肢があるのだと知ってくれることを願っています。人生には多くのチャレンジがあります。私たちを恐れさせるべきでないものは、私たちがコントロールできるものです」
次のページからは、乳がんサバイバーであるセレブのパワフルな体験談をお届け!
シンシア・ニクソン
「闘病中は、(乳がんであることを)公にするつもりはなかった。病院にパパラッチが来ることは避けたかったから。『あぁ、どうか気づかれませんように』と願っていたの。(母親も乳がんだったため)自分にも可能性があることはわかっていて、(毎年受けるマンモグラフィー検査で)早い段階で発見されて治療をできたことは最善のことだったと思うわ」-『ナイトライン』
シェリル・クロウ
「私は(乳がんと)診断されていくつかの教訓を得たの。一つは、自分が大事にする人リストの一番上に自分を置くこと。もう一つは“No”と言ってもいいということ。自分の声に従い、自分自身を大切にしているなら、誰かに怒られても幻滅されても気にすることはないわ。みんなを幸せにすることはできないし、自分で自分の人生をコントロールできると思っていても、実際にはそうでもないことも学んだ。私はとても健康的だったし、家族にも病歴はなかったけど乳がんと診断された。何が起こるかはわからないわ」-US版『カントリー・リビング』
ジェーン・フォンダ
「数年前に乳がんを患ったんだけど、私にとって良いテストになったわ。私は常々、死ぬことは怖くないと話していたから。怖くなかったのよ。“私もこの経験(乳がん)をした何百万人という女性たちの一員になったんだ”と感じたわ。なんと興味深いことなのかと。どんな旅になるのかとね」-『Oprah's Next Chapter』
カイリー・ミノーグ
「ガンを患っていた時、家族に対して申し訳ないと思うことが多かった。闘病中、私はなんとか乗り越えようとしていたけど、家族は無力さを感じていたの。そんなことはなくて、家族の支えは私にとって何よりも大切なものだった。(無力さに)傷ついていても平気なふりをしている家族を見るのは辛いことよ。家族は自分たちの苦しみを私には見せなかったから、みんながどれだけ泣いたのかは分からないわ」-AUS版『MSN』
オリヴィア・ニュートン=ジョン
「私はこの“戦い”にいる数百万の一人。“戦い”と言うべきではないわね…この“旅”。多くの人はこれを“戦い”と見ているけど、どう捉えるかは自分次第。私は自分の使命の一部だと思っているわ」-AUS版『サンデー・ナイト』
リタ・ウィルソン
「女性らしさやセクシーさを感じるのは、ブラジャーやカップのサイズでもなく、胸があるか・インプラントを入れているかどうかでもない。もっと内面的な部分よ。私はダンスをしたり、歌ったり、曲を書いたりする時に感じるの。今までより自分らしさを感じるわ。解放感もあるの。今はこの新しい胸で70年代のようなブラレスを楽しむこともできる。自分を解放する全く新しい方法よ」-US版『ハーパーズ バザー』
Photos: Getty Images
Translation: Ai Ono
From Good Housekeeping