お姫さまお菓子物語
王さま編
スタニスラス・レクチンスキー王
1677年、スタニスラス・レクチンスキーは、ポーランド西部ポズナニ(中世ポーランドの首都)の県知事だったラファウ・レクチンスキー伯爵と、アンナ・ヤブウォノフスカの子どもとして生まれました。
好奇心旺盛で、才能にめぐまれたレクチンスキーは、1704年、スウェーデンの後ろ盾を得て、ポーランド王になりました。
外国から政治に強く口出しされることが多かったポーランドでは、王さまは強国の後おしで決められていたのです。しかし、09年、後ろ盾のスウェーデンがロシアに敗れ、レクチンスキー王は追放されてしまいます。
その後、フランスのアルザス地方に移住。25年、娘のマリーをフランス王ルイ15世と結婚させ、ブルボン王家と親戚になりました。
33年にポーランド王のアウグスト2世が亡くなると、ルイ15世の支援で再び、ポーランド王の座をねらいますが、ロシアがこれを認めません。
結局、レクチンスキー王は、フランスの中のロレーヌ公国をもらい、本国からは「ポーランド王」を名乗ることだけは認められたので、この争いから手をひきました。
レクチンスキー王は、おいしいものを愛する美食家として名高く、さまざまな料理やお菓子を生み出しました。マドレーヌや、ブッシュ・ア・ラ・レーヌ(ひと口大のパイ)などを考案。
クグロフにお酒をかけ、やわらかくして食べたところ、とてもおいしかったので、コルク栓の形をしたイースト菓子にラム酒をかけた「ババ」が生まれました。
王は人を楽しませるのも好きで、デザートにお酒をかけて燃やす「フランベ」も考え出したといわれます。
☆ババ
東ヨーロッパが起源のババは、小麦粉、卵、バターを使い、イースト(酵母菌)でふくらませた焼き菓子です。ラム酒風味のシロップをしみこませたババは、特にフランスで親しまれていますが、レクチンスキー王が、故国のババを原形にして作らせたものです。
名前の由来は、「千一夜物語」がお気に入りだったレクチンスキー王が、登場人物のアリババにちなんで「ババ」と名づけたともいわれます。その後、19世紀のパリの菓子職人が、法律家で、食通だったジャン・アンテルム・ブリアサバランに敬意を表して「サバラン」と名前を変えました。
美食王と呼ばれたレクチンスキー王は、見た目にもかわいらしく、おいしいお菓子を作らせては、愛する娘の元へとせっせと送り続けました。
〈材 料〉
(プリン型12個分)
ドライイースト……6グラム
ぬるま湯(35度)……30ミリリットル
強力粉……250グラム
グラニュー糖……15グラム
卵……4個
塩……5グラム
無塩バター……125グラム
レーズン……40グラム
型ぬり用バター……適量
※シロップ
グラニュー糖……100グラム
水……125ミリリットル
ラム酒……小さじ2
〈作り方〉
①ボウルに無塩バターを入れ、溶かして、あら熱をとっておく。
②ドライイーストとぬるま湯は合わせておく。
③レーズンは、熱湯にくぐらせ、油分を落とす。
④大きめのボウルに強力粉、グラニュー糖、②のイースト、卵、塩を入れ、しっかりこねる。
⑤全体がまとまったら、①と③を加え、さらにしっかりこねる。
⑥生地全体につやが出るまでまぜたら、食品用ラップをかけ、お風呂場などのあたたかい場所(約30度)に置き、生地が約2倍にふくれるまで発酵させる。
⑦型にバターをぬり、発酵が終わった生地を型の半分量入れる。ふたたび食品用ラップをかけて、あたたかい場所で20分ほど発酵させる。
⑧生地が型の8分目ぐらいまでふくれたら、180度に温めておいたオーブンに入れ、15~20分焼く。
⑨小なべにシロップ用のグラニュー糖と水を入れ、火にかけ、ふっとうさせる。火を止め、あら熱をとり、ラム酒を加える。
⑩焼き上がった生地を型からはずし、⑨をたっぷりかけて、しみこませる。
* *
【監修】今田美奈子(いまだ・みなこ)洋菓子・食卓芸術家
外部リンク