中学生、高校生になってから、部活動などで本格的にスポーツを始めた人も多いでしょう。適度なスポーツは人生を豊かにしますが、無理のしすぎは健康を損ない、特に女子には疲労骨折や無月経となる恐れもあります。東京都は運動部の女子生徒向けに、体調管理のポイントなどをまとめた冊子を作りました。(八木みどり)
東京都が作った冊子「女子アスリートのコンディショニングガイド」は、体調管理の基礎知識が紹介されています。運動するには毎日のトレーニング量に見合った栄養(食事)と十分な休養(睡眠)が大切です。しかし、運動量に対して食事の量が少なくなってしまうとエネルギー不足となり、月経不順による貧血や、疲労骨折などを引き起こす可能性が高くなることなどが説明されています。
冊子の監修者の一人、順天堂大学スポーツ健康科学部の准教授で、同大陸上部の女子監督を務める鯉川なつえさんのもとには毎年、全国各地の陸上強豪校から学生が入学してきます。しかし、入学時は無月経となっている学生も少なくないといいます。
「人間は本来、生きることと成長することに栄養を費やしている。スポーツは、その余ったエネルギーでやるもの。無月経の人がスポーツをするなんて、運動に耐えうる体ではない人が運動しているということ」と、その危険性を指摘します。
無月経になると、女性ホルモンである「エストロゲン」が低下します。その影響で骨密度も低下してしまい、骨粗鬆症になる恐れが高まります。さらに将来的には妊娠しにくい状態になるおそれも指摘されています。
知識付けて自立を
鯉川さんはトレーニング同様に「しっかり食べる」ことを指導していますが、「食べてもいいんですか?」と驚く選手が多いそうです。「高校までは『痩せれば速く走れる』と誤った指導を受けてきた選手の考え方を改めていくのは大変」と話します。
「だれにでも通用してこそ、スポーツ科学」と、鯉川さんは話します。「ひとにぎりの天才がやってきたことが『正しい』と考えられてきたのが、スポーツの方法論の間違い。スポーツ科学に基づいた指導が日本の標準になっていないのが問題です」
とはいえ、選手の立場では、根性論のような指導にも従わざるを得ない場合も多いでしょう。「自分の体は自分で守るしかないので、(指導者に)負けないだけの知識を付け、自立したアスリートになることを目指しましょう」
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