トップ選手は「遅咲き」の傾向
日本陸上競技連盟(日本陸連)が去年12月、選手の育て方に関する新しい指針を発表しました。注目されたのが、同じ学年の中で体の成長が遅れやすい、早生まれ(1月1日~4月1日生まれ)の小中学生への配慮です。「たとえ大会などで良い成績が出なくても、競技を続けてほしい」と呼びかけています。(松村大行)
同じ学年でも発育に差
「小・中学校時代の競技成績にこだわりすぎていませんか?」。日本陸連が作った指導者や保護者向けの資料には、こんなメッセージが載っています。そう呼びかける理由の一つが、「相対年齢効果」の影響です。同じ学年の中での誕生日のちがいが、勉強や運動の成績などにあたえる影響のこと。同じ学年でも、4月生まれの人と3月生まれの人とでは、発育に1年近い差がつきます。
苦戦し高校でやめる?
日本陸連が各年代の全国大会出場者の誕生月を調べたところ、特に小中学生の年代で、早生まれの人の割合が低い傾向がありました(2013年)=グラフを見てね。
一方で、オリンピックや世界選手権に出場した日本代表選手には、誕生月のかたよりがほぼありませんでした。加えて、中学の段階で約6割、高校の段階でも約2割の日本代表選手が、全国大会に出場していませんでした。個人差はありますが、多くの選手が大学生や社会人になって力をつける「遅咲き」です。
それなのに、陸上競技をする中学生の6割以上が、高校生の時点でやめています。調査にたずさわった日本大学教授の森丘保典さんは「同じ学年の中で成績が出なかったことの影響があるのでは」とみています。
ジュニア五輪を年齢区分に
対策は始まっています。たとえば中学生年代の選手が出場するジュニアオリンピックは去年から、区分けの基準を学年から年齢に変えました。中学3年生に交じり、早生まれの高校1年生も出られるようにしました。
「年を経るごとに早生まれの子の体の成長が追いつき、差が縮まります。小中学生の年代の成績で、将来は決まらないことを知っておいてほしいです」(森丘さん)
早生まれの朝小リポーターは…
早生まれの朝小リポーターにも体験談を聞きました。3月生まれの東京都町田市の小学5年生は「かけっこの時、体格の差から不利だと思いました」。逆に「クラスで一番速く、リレーの選手にも選ばれている」という2月生まれの香川県高松市の小学3年生もいます。
2月生まれの東京都府中市の小学5年生は、習い事のミニバスケットで、背の低さや早生まれという理由から、練習の列で同学年の中でも前のほうに並ぶことが多いそうです。「時々チビといわれることがあるので、早く大きくなりたい。でも年が明けてすぐに誕生日が来るのはうれしいです」
【1~3月生まれのアスリート】
陸上短距離のサニブラウン・ハキーム選手(3月)=写真(左)=▽マラソンの川内優輝選手(3月)=写真(右)=▽プロ野球の吉田輝星選手(1月)▽サッカーの三浦知良選手(2月)▽体操の内村航平選手(1月)▽ラグビーの松島幸太朗選手(2月)▽バドミントンの奥原希望選手(3月)※( )内は誕生月
【なぜ4月1日生まれも早生まれなの?】
年齢計算に関する法律で、年齢は誕生日ではなく、その前の日に増える決まりです。4月1日生まれの場合、3月31日に年をとるため、早生まれとあつかわれます。海外でも相対年齢効果の影響が調査されていますが、国によって学年を区切る時期がちがうため、早生まれとされる誕生月はさまざまです。
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