映画「ばあばは、だいじょうぶ」
主役の寺田心さん、原作者に聞く
家族が認知症になったことを小学生の視点でえがいた映画『ばあばは、だいじょうぶ』が今月、公開されます。ベストセラーになった同名の絵本が原作です。主役の「翼」を演じた俳優の寺田心さんや原作者の楠章子さんなどに作品にこめた思いを聞きました。(畑山敦子)
大好きなばあばが認知症に
翼は、ばあばといっしょに住んでいます。つらい時もやさしくはげましてくれるばあばが大好きですが、ばあばは少しずつ物忘れが増え、脳の機能が低下する認知症であることが分かります。予定を忘れたり、大事な物の場所を忘れてしまったりして混乱する様子を見て、翼はばあばが変わってしまったと思い、さけるようになります。そんなある日、ばあばがいなくなってしまいます。
2016年に発売された同名の原作絵本(作 楠章子、絵 いしいつとむ、童心社)を読んで心を動かされた映画監督のジャッキー・ウーさんが映画化しました。作品は、去年12月にイタリアで開かれた「ミラノ国際映画祭2018」で最優秀監督賞と、俳優の寺田心さんが最優秀主演男優賞を受賞しました。
ジャッキーさんは4月の完成披露試写会で「原作を読んだ時、頭が真っ白になりました。認知症が身近な病気としてプラス思考に考えられるような映画にしたいと思いました」と話しました。
ばあばを演じた俳優の冨士眞奈美さんは「物事を忘れてしまう病気になった時、家族はどう接するのか難しいと思いながら演じました」と言います。
寺田さんは去年夏の撮影中、撮影以外でも冨士さんのことを「ばあば」と呼んでいたそうです。「翼くんの気持ちになれると思って冨士さんにお願いしました」。演じながら「ぼくも自分のおばあちゃんが大好きで、ばあばとおばあちゃんを重ね合わせていた」と言い、泣く場面では初めて自然と涙がこぼれたそうです。
人の根っこは変わらない
今、小学5年の寺田さん。撮影がない日は家でずっと夏休みの宿題をやっていたそうです。
もし家族や身近な人が認知症になったら「この役を演じさせていただいて、家族のことを考えるようになりました。うちの祖母もなるかもしれないし、母もまだ先だけどなるかもしれない。その時は自分が少しでも家族を助けられるようになりたいです。この映画を見た人に、家族のことを大切にする気持ちが伝わってほしいです」と話します。
楠章子さんは映画について「忘れていき、変わってしまうばあばをこわいと思う気持ちを乗りこえ、『自分が守る』と変わっていく翼の気持ちや、老いたり病気になったりしても人の根っこは変わらないというテーマが表現されていました。ばあばが街をさまよう場面や、忘れるということについての登場人物のセリフなど、映画だから表現できた場面もあります。子どもも大人も、多くの方に見ていただきたいです」と話します。
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