音楽はお好き?「海を越えた南の国々と共通点」
日本の一番南西にある県が沖縄です。本島を中心にいくつかの島からできています。しかしその文化は、本土と呼ばれる北海道、本州、四国、九州とはかなりちがっています。
まず言葉ですが、古い時代の日本語(大和言葉)が残っています。ちょっと聞いただけでは、標準語を使っている人たちには理解しにくいものです。例としてわらべ歌「べーべーぬ草」の歌詞を挙げてみましょう。
いったあんま まーかいが
(おまえの母さん どこへ行った)
べーべーぬ草かいが
(ヤギの食べる草かりに)
べーべーぬまさ草や
(ヤギの好きな草は?)
はるぬわかかんだ(畑の若カズラ)
いかがですか? 意味がわかりますか? ちなみに私は聞いただけでは全くわかりませんでした。
そして、旋律も変わっています。本土の音階にはまず出てこない7番目の音(シ)が堂々と出てきます。西洋の音階でこの音が使われる場合は、必ず次に「ド」の音へ上がるのですが、この歌では下がってしまいます。これが何とも不思議な感じで、沖縄の言葉の抑揚(音の調子を上げたり下げたりすること)と合っているのです。拍子も三拍子で、日本古来の音楽には見つかりません。
沖縄は19世紀までは「琉球王国」と呼ばれ、位置的に近い中国の影響を受けていました。色彩に原色を多く使うことや、服装がどことなく似ています。20世紀のフランスの画家、マティスの絵のように生き生きとしています。
しかし、それだけでなく、音楽ははるか南のインドネシアとの共通点も指摘されています。
また、南太平洋のパプアニューギニアで行われる、草をまとった神さまがやってくる行事も、沖縄の祭り「アカマタ・クロマタ」と似ています。太平洋を南から北に向かって流れる黒潮に乗って、伝わってきたのかもしれません。
「三線」と呼ばれる、三味線の祖先に当たるヘビの皮を張った楽器で伴奏される音楽は、私たちをうきうきした気分にさせてくれるのです。
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青島広志(あおしま・ひろし)。1955年、東京生まれ。東京芸術大学、同大学院修士課程を首席で卒業、修了。「火の鳥」「11ぴきのネコ」などこれまでに200曲あまりを作曲。著書に『クラシックの時間ですよ!』など。東京芸術大学講師、洗足学園音楽大学客員教授。テレビ出演多数。イラストも筆者
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