さまざまな分野を勉強したい、多様な文化や習慣を持った人々と交流したい――。高校卒業後の進路として、海外の大学を目指す人もいるでしょう。しかし、日本の大学とは出願や受験の方法が大きく異なるため、注意が必要です。留学を指導する塾「アゴス・ジャパン」の松永みどりさんに、海外受験の心得を聞きました。(寺村貴彰)
一発勝負ではない受験
日本と海外の大学受験の大きな違いは「一発勝負のみのテストがあるかどうか」と松永さんは話します。
日本では多くの大学に入学テストがあり、その結果で合否が決まります。一方、海外の大学には一斉テストがなく、求めるのは「これまで学校生活で学んできた成果や姿勢」。人となりがわかるエッセーや学校の成績、課外活動などを書類にまとめて提出し、総合的に評価されて合否が決まります。基本的には、それらをすべてオンライン上で入力・登録します。
必要な書類は学校によって異なるため、最終的には公式サイトで確認が必要です。ここでは米国の大学の一般的な例を紹介します。
専門性か進路探しか
「総合大学」「リベラルアーツカレッジ」「専門大学」の大きく三つに分かれます。最難関校の合格率は数%ともいわれます。
総合大学は、大学院の研究施設が充実した中~大規模の大学です。専門性の高い分野まで幅広い領域を学べ、スタンフォードやハーバードなどの私立大学のほか、州立難関校のカリフォルニア大学バークレー校などがあります。
リベラルアーツカレッジは比較的小規模で、アットホームな雰囲気。幅広い教養科目を受講しながら、自分の希望する専攻領域を見つけていきます。
このほか、日本の音楽大学や美術大学のように、芸術などに関する専門大学もあります。
日本の大学との併願は難しい
高3の11月に出願し、12月中旬に合否が決まる「アーリー(早期)」。1月に出願し、3月末までに合否が決まる「レギュラー」に分かれます。
日本ではセンター試験が1月にあり、そこから各大学の2次試験が始まります。日米の入試スケジュールが重なるため、一般的に併願することが非常に難しいとされます。
米国では書類で勝負が決まるため、願書の作成には数カ月かかります。また、高3では奨学金の申請も始まるため、松永さんは「大学から求められるTOEFLやSATといった試験のスコアは、高2~高3の1学期までに固めておくことが望ましい」とアドバイスします。
日頃の成績や活動が要 適性試験は複数チャンス
①Common Application
(共通の願書)
共通願書として使えるオンライン願書で、現在約800の大学が受け付けています。マサチューセッツ工科大学やジョージタウン大学など、独自の出願サイトが指定されることもあります。
②高校の成績証明書
上位校では、中3以降の成績が評価されます。たとえ高1のときの成績が悪くても、高3までの伸びも考慮されます。
③TOEFLのスコア
英語力を測るテストの一つ。リスニングやリーディング、ライティング、スピーキングからなり、コンピューター上で受験します。120点満点で、最上位校だと100点以上が求められます。
④SATのスコア
米国を中心とした適性試験。日本のセンター試験のようなものです。英語と数学が課される「reasoning」と、任意で科目を選ぶ「subject」に分かれ、学校によって提出する数が変わります。年に複数回、受験のチャンスがあり、最も良い点数を記入します。1600点満点で、最上位校だと1500点以上が求められます。
⑤推薦状
担任や部活動の先生など、自身の長所を理解している人に書いてもらいます。学校により2~5通などの制限があります。
⑥課外活動や受賞歴
研究の成果やボランティア活動、地域活動などを書きます。
⑦エッセーや面接
学校によってはエッセーや面接が必要となることも。
各種制度 要チェック
1年間の学生生活にかかる費用(授業料や生活費)は約500~700万円。高額なため、奨学金の申請がほぼ必須となります。さまざまな財団や各都道府県、大学などが制度を実施。高3の9~2月ごろにかけて締め切りがあります。
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