「風をつかまえた少年」来日メッセージ
14歳の時に自力で風力発電装置をつくり、「風をつかまえた少年」として知られるようになったアフリカ・マラウイのウィリアム・カムクワンバさん(31)が、7月に来日しました。東京都千代田区立麹町中学校では特別授業を行い、「みなさんも壁を乗り越えて、夢をかなえてほしい」とメッセージを送りました。(岩本尚子)
本で風力発電を知る
カムクワンバさんの14歳の時の挑戦は、日本では書籍『風をつかまえた少年』(文芸春秋)や絵本で知られ、英語の教科書「NEW CROWN3」(三省堂)にも載っています。
2001年、洪水と干ばつで家のトウモロコシ畑が干上がって収穫ができず、学費を払えなくなったカムクワンバさんは中等教育学校を退学になりました。
そんな中、図書室で見つけた『USING ENERGY(エネルギーの利用)』という本で、風車というもので水をくみあげ、発電できると知ります。
人工物なら自分でも
麹町中の3年生は英語の授業で「もしカムクワンバさんにインタビューできるなら」という課題で、質問を考えていました。7月12日、サプライズで麹町中を訪れたカムクワンバさんを歓声で迎え、次々と直接、質問しました。
カムクワンバさんは退学になった時の気持ちや、風車に施した工夫などを、丁寧に話しました。
「見たこともなかった風力発電装置を、どうしてつくれると思ったのですか」という質問には、「他の人がつくって存在しているんだから、自分でもつくれると思いました。自然物ではなく、人工物なんだから」と答えました。
そして「人生に立ちはだかる壁は、自分が成長する機会です。自分を信頼して集中して向かえば、乗りこえて夢をかなえることができます」とメッセージを送りました。
若い人の才能を開く手伝いをしたい
「風をつかまえた少年」は映画化され、現在公開中です。カムクワンバさんは「僕の物語をよりたくさんの人にシェアできて、うれしい」といいます。
映画の舞台は01年。最貧国の一つといわれるマラウイの現状は、当時よりは良くなっているといいますが、農業国なので天候の影響を受けやすいことには変わりなく、今年3月にもハリケーンで大きな被害が出たそうです。
中等教育学校の学費は今は無料になりましたが、地域によっては教科書が2、3人に1冊しかなく、自主学習のために持ち帰れるのは交代制という学校もあるといいます。
カムクワンバさんは米国の大学を卒業し、母国の教育支援に取り組んでいます。
「教育を受けることで、自分の好きなタイミングで好きな選択ができる。開かれるドアが増えるんです。僕は若い人たちに勇気を与え、才能を開く手伝いをしたい。コミュニティーの問題解決に携わる一員であり続けたいんです」
ウィリアム・カムクワンバ
1987年8月5日生まれ、マラウイ出身。14歳の時、廃品を使って風力発電ができる風車をつくり、国際会議に招待される。2013年、米タイム誌の「世界を変える30人」に選出。実話を元にした映画「風をつかまえた少年」は公開中。(撮影・近藤理恵)
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