公立図書館の司書が、おすすめの本を紹介します。
『青い鳥』
「間に合ってよかった」
そう言ってひとりぼっちの生徒に寄り添う村内先生は、臨時の国語の教師。吃音症のため思うように言葉が出ませんが、だからこそ大切なことだけを話します。いつもハンカチを握りしめている女の子、担任を傷つけカエルを殺す男の子……。
印象的なのは、父親が自殺した男の子への言葉。クラスメートを「みんな」でひとくくりにして、なじめない男の子に、「みんな」も一人ひとり人格があるから怖がることはない、と静かに教えます。
心を温めるのは、心のこもった言葉だと改めて思います。そんな言葉が一つでもあれば、前に進む力になります。自分にとっては中学校に入学した時に言われた「あなたがたは、選ばれて入ったのです」という言葉。存在を認められたようで心が震えました。
優しいということ、相手の立場になることの本当の意味がわかる本です。
重松清/著、新潮文庫、724円
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大野城まどかぴあ図書館(福岡県)河北奈津子
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