朝ベッドから起き上がると自動的にカーテンが開く、洗面台の前に立つと睡眠時間や体重などが表示される――。住んでいる人に家が快適な生活を働きかける「未来の家プロジェクト」が神奈川県横浜市で進んでいます。実際に人が1週間交代で暮らす実験もくり返されています。どんな家なのか、見てきました。(編集委員・根本理香)
「IoT」で照明が自動点灯、体調管理も
横浜市泉区の市立図書館前の空き地に、トレーラーハウスが止まっています。ここで、あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」の技術を使った「スマートホーム」の実証実験が行われています。
ロフト(屋根裏部屋)付きのワンルームで広さは約25平方メートル。住む人の動きや生活パターンをとらえるため、家の中にはたくさんのセンサーが取り付けられています。外から帰ってくると自動的に室内の照明やエアコンがつきます。
テレビの前のソファがストレスの度合いをチェックしたり、ベッドで寝ている間に睡眠時間だけでなく睡眠の深さを測れたりもします。食事をスマートフォンで撮影すると、栄養バランスやカロリー計算をして、「かなりエネルギーオーバーですね」などとアドバイスまでしてくれます。血圧を測ると、前日との比較などができます。
操作はスマホで
ドアの鍵の開け閉めをはじめ、お風呂をわかしたり、照明の色を変えたりするなど、さまざまな機器の操作はすべてスマホでやります。玄関の鍵の閉め忘れも、外出先からスマホを使って閉められます。人が家の中のどこにいるかをスマホで見ることができるので、防犯だけでなく、将来は一人暮らしのお年寄りの見守りにも役立ちそうです。
実験参加者 「健康を意識した」
未来の家プロジェクトは、横浜市と民間企業が2年前から進めている取り組みです。このスマートホームでの実験を通じて、住む人に健康で快適な生活を働きかける家の実現をめざしています。現在は15団体が参加しています。
実証実験はこれまでに2回あり、計20人のモニターが1週間ずつスマートホームで生活しました。参加経験がある60代の男性は「健康については、それまであまり気にしていなかったけれど、(実証実験に)参加中は、血圧や体重、食事のカロリーなどを毎日数字で目にするので、いや応なしに意識しました」と話していました。
今年3月から6月にかけては3回目の実験が進行中で、初めて公募によって選ばれた一般市民のモニターが参加します。プロジェクトは2020年3月までで、それまでに実証実験もさらに2回を予定しています。参加企業やスマートホームに取り付けるIoT機器も今後増える予定です。
未来の家はいつごろ実現するのでしょうか? 「すでにある技術を使っているので、部分的には徐々に住宅に入ってきてもおかしくない」と参加企業の一つ、NTTドコモの担当者。ただ、家全体としての販売がどうなるかは未定だそうです。
【IoT】とは
「Internet of Things」の略で、さまざまな機器がインターネットにつながって情報をやりとりすること。「モノのインターネット」とも呼ばれます。機器に付けられたセンサーで得られた情報をネットで共有し、新しいサービスの提供などに活用します。建物や電化製品、自動車、医療機器などの分野で広がってきています。
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