「結局、ウナギは食べていいのか問題」
著者・海部健三さんに聞く
暑い夏を乗り切るためにウナギを食べる風習があります。でも、「絶滅危惧種」のウナギを本当に食べていいのか気になります。『結局、ウナギは食べていいのか問題』(岩波書店)の著者で、中央大学准教授の海部健三さんに聞きました。(山本智之)
ある種が減ると他にしわ寄せ
――ニホンウナギが絶滅危惧種になった理由は?
海部さん 天然のウナギと稚魚が、どのくらい漁獲されてきたかというデータを分析しました。その結果、数が大きく減っていると推測されたため、国際自然保護連合(IUCN)が2014年に絶滅危惧種に指定しました。
ルール守って漁獲を
――ニホンウナギが減り続ける一方で、2000年には国内で約16万トンものウナギが食べられていたそうです。
海部さん 中国でヨーロッパウナギの養殖が盛んになり、それが当時、大量に日本に輸入されました。このため、国内にたくさんのウナギが出回ったのです。
――去年のウナギの消費量は約5万トンで、当時に比べて3分の1以下です。
海部さん ヨーロッパウナギも絶滅危惧種です。数が減ったため、09年に「ワシントン条約」による国際取引の規制が始まりました。フランスやスペインなどの国がヨーロッパウナギの稚魚を中国に輸出することが、規制されたのです。その影響で、中国から日本に輸入されるウナギも減りました。
――そのほかの種類のウナギは、どんな状況ですか。
海部さん ヨーロッパウナギもニホンウナギも減ってしまったため、インドネシアなどにすむビカーラ種と呼ばれるウナギの需要が高まりました。そのことが原因で、ビカーラ種は「準絶滅危惧種」に指定されました。ある種類のウナギが乱獲などで減ると、ほかの種類のウナギにしわ寄せが行くのです。
――養殖に使うための稚魚の漁獲量が減り、ウナギの値段が上がる原因になっていると聞きました。
海部さん 国内で養殖に使われる稚魚の半分ほどは、密漁されたり、正しい量が報告されなかったりと、ルールをきちんと守らずに漁獲されています。そうした現状についても、知っておいてほしいです。
どの時期食べるかは問題ない
食べる量抑えないと
――絶滅危惧種のウナギを食べることや、「土用の丑の日」の風習をどう思いますか。
海部さん 絶滅危惧種だからといって、取ったり食べたりしてはいけないルールはありません。丑の日のウナギは、江戸時代から続くとされる食文化ですし、どの時期に食べるかはあまり問題ではありません。それより、ウナギが生まれて増えるスピードよりも、私たちが食べるスピードが上回っていることが問題なのです。ウナギを食べる量を抑えるとともに、ウナギのすみやすい昔の川の環境を取り戻すことが大切です。
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