音楽はお好き?「幽霊も出るよ 20世紀後半のオペラ」
20世紀はすごく昔のように思うかもしれませんが、実はそんなに前のことでもないのです。みなさんのまわりには、多くの20世紀生まれの人たちがいますね。
20世紀前半のオペラは、まだイタリアとドイツががんばっていましたが、後半になるとそれまでふるわなかったイギリスやアメリカで面白い作品が書かれるようになりました。
その代表格が、ベンジャミン・ブリテン(1913~76年)と、ジャン=カルロ・メノッティ(1911~2007年)です。この2人もまた、同業者の常としておたがいをライバル視していたことが知られています。来日した折、相手の曲がどのくらい上演されているのかたずねたそうです。ただし、その作風はかなりちがったものでした。
純粋なイギリス人であるブリテンは、キリスト教徒として厳格な教育を受け、すべての分野で作品を残そうとしました。しかし、一生の親友となるテノールのピーター・ピアーズを知ってから、声楽曲を中心に活動を始めます。
日本で鑑賞した能「隅田川」を元に書いたオペラ「カーリュー・リバー」は、子を失った母をえがいています。ピアーズが主人公の気がふれてしまった母親役で、その子どもの幽霊はボーイソプラノが歌うという、おそろしくて迫力のある内容ですが、最後は母親をあわれに思う気持ちがわいてきます。
イタリア生まれのメノッティは、若くしてアメリカに移住しました。生まれながらにイタリアオペラの感覚を持っていたと見えて、伝統的な歌の書き方にアメリカ特有のうきうきした雰囲気を加えました。
1946年に初演された「霊媒」(死者の魂を呼ぶ人)は、お客をだましてお金をもうけていた老婦人の前に、本物の霊が現れ(あるいはそう思いこみ)、どんどん破滅に追いこまれていくという、これまたおそろしい話です。しかし、部分的にはアニメソングみたいな音楽もあったりして、十分に楽しめるでしょう。
2人にはそれぞれ、小学生向けの作品として「小さな煙突掃除」と「アマールと夜の訪問者」もありますから、ここから鑑賞を始めてみてください。
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青島広志(あおしま・ひろし)。1955年、東京生まれ。東京芸術大学、同大学院修士課程を首席で卒業、修了。「火の鳥」「11ぴきのネコ」などこれまでに200曲あまりを作曲。著書に『クラシックの時間ですよ!』など。東京芸術大学講師、洗足学園音楽大学客員教授。テレビ出演多数。イラストも筆者
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