人前に立って発表をする「プレゼンテーション」(略してプレゼン)。学校の授業などでおこなう機会があるかもしれません。どのような力が求められ、どのような点に気をつければいいのでしょうか。東京学芸大学の中村和弘准教授(国語科教育学)に教えてもらいました。(編集委員・沢辺雅俊)
「何のため」「だれに」が重要
――発表する力は、なぜ必要とされるのですか。
求められる力は、大きく次の三つです。①自分の意見を公の場で相手(聞き手)に伝える、②聞き手のことや自分の意見について考える、③聞き手に配慮して関係をつくる――。入試の面接などで話すケースがあるかもしれませんが、その場合は①~③に加えて、状況に応じた受け答えができるかどうかも見られているといえそうです。
――小学校では、どのように指導されますか。
中学校の段階では、スライドなどを使って視覚的に伝える「プレゼン」の要素が強くなりますが、小学校の段階では、その手前の音声言語で伝える「発表」がメインです。
――具体的な手順やこつを教えてください。
「異なる学年で遊ぶ企画について、6年生が全校集会でプレゼンをする」という例で説明します。
まずは「何のために」「だれに」向けて発表するかを考えるのが重要です。
その次は、実際に調べて「インプット」する段階。あるグループが「ドッジボールを推す」としたら、説得力を増すための情報を集めます。1、2年生にドッジボールが好きかどうかをアンケートするというのもいいアイデアですね。
さらに、どのように話すと効果的か「作戦」を立てます。最初と最後に何を話すのがいいかなどと考え、構成を練ります。大きめの紙を用い、アンケートの結果を円グラフにまとめるのもいいでしょう。
実際に「発表」するときは、その場に応じた声の大きさで話します。ドッジボールの場合、やわらかいボールの実物を低学年の前列の子にさわらせて「当たってもいたくない」とアピールするのも一案です。
こうした流れで終わりがちですが、「ふり返り」として「ここがうまくいった」などと自己評価をするとさらに効果が高まります。
相手を意識して事前の準備を
――あらためて発表のポイントは何ですか。
強調したいのは「口から出る手前までが非常に重要」ということ。「声が小さい」「緊張しちゃう」などと発表の場面だけに目がいきがちですが、そこだけをとりあげて「うまく話そう」としても限界があります。
きちんと準備しておけば、声が小さくても伝わります。
「早口だから情報を整理しよう」「アドリブが得意だから準備しすぎないほうがいいかも」といった案も事前に考えられるでしょう。伝わったという経験が、いずれ自信になります。
「何のために」「だれに」という意識を忘れてはなりません。たとえばスライドづくりの作業に夢中になりすぎたあまり、結局伝わらなかった……などとならないように気をつけます。
――家庭でできる取り組みはありますか。
保護者が「声が小さいよ」などというと、かえって口を開かなくなってしまいます。伝えようとする気持ちをほめるのがいい。おもしろそうに聞いていると、それが聞き方のお手本にもなります。
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