スマートフォンを使い過ぎると、子どもの学力低下や脳の発達の遅れといった悪影響を及ぼすことが最新の研究で明らかになっている。脳科学者で東北大加齢医学研究所長の川島隆太教授が取り組むスマホやゲームの影響に関する調査から、興味深いデータを紹介する。
1時間以上使うと成績低下
東北大と仙台市教育委員会が、小学5年生~中学3年生の計約3万7千人を対象に行った2018年度の調査では、スマホの使用時間が1日1時間以上の児童生徒は、1時間未満の児童生徒に比べ家庭での勉強時間が長くても成績の伸びは不十分で、偏差値も下回っていた。また、1時間未満の児童生徒は家庭学習の時間や睡眠時間がしっかり確保でき、良い成績を残していた。
アプリ操作で集中力散漫に
仙台市内のスマホを持つ小・中学生約2万4千人に行った調査によると、勉強中にスマホで複数のアプリを操作する「マルチタスク」を行っている児童生徒はテスト成績が低い傾向にあった。
勉強中に無料通信アプリLINE(ライン)などのインスタントメッセンジャー、動画、ゲーム、音楽を「ほとんど使わない」「時々使う」「いつも使う」のグループに分け、学力テストの国語、算数(数学)、理科、社会の4教科の成績を平均した結果、勉強中は「ほとんど使わない」グループだけが平均点を超えた。勉強中にマルチタスクを行うと学習に集中できないばかりか、学習してもその効果が少なくなるとみられる。
スマホでは脳が活性化せず
感情や思考、記憶をつかさどる脳の「前頭前野」は、スマホの使用時やLINEでのメッセージのやりとりの際、安静時よりも活動量が少なくなる「抑制現象」が生じることが分かった。
例えば、国語辞典とスマホを使って60秒間言葉の意味を調べた時、脳がどう働くか調査した結果、国語辞典では三つの言葉の意味を調べることができ、前頭前野の血流量が増え、活発に働いていた。しかし、スマホでは五つの言葉の意味を調べることができたが、前頭前野の血流量は少なく、活発に働いていなかった。
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