「ラーメンスクール」に外国人
今や日本を代表する食べ物の一つになっている「ラーメン」。その味のとりこになった外国人が、お店を開くために学びに来る「学校」があります。大阪府東大阪市の「宮島ラーメンスクール」です。「1日参観」してみました。(中田美和子)
1週間の講座で経営の仕方も
「海外から来た人は、一から学ぼうという姿勢でとても素直。こちらも腰をすえて教えないと、と思います」と、スクールの代表でラーメンプロデューサーの宮島力彩さん(53歳)はいいます。
講義を受けるのは個人やグループ単位なので、内容は要望に合わせます。めんやスープの作り方だけでなく、値段の決め方や設備など開店に必要なことも教えます。東京や海外で出張講座も開きます。生徒の8割は外国人で、大阪の教室だけで年間70組になります。
取材の日、宮島さんが教えていたのはマレーシアの2人です。2年前に北海道でラーメンを食べて、ラーメン屋を開きたいと思った陳宇軒さん(31歳)。仕事を休んで、シェフをしている幼なじみと来ました。「1週間の講座を受けるだけで店を開けそうですか?」と聞くと、「そう思わなければ来ませんよ」という力強い返事が返ってきました。
2階ではもう一人の先生、松原比路美さん(50歳)が、2人の生徒を教えていました。日本に留学経験のある韓国人のキムジンファンさん(35歳)は「韓国では日本のラーメンがブーム。ちゃんとした味を出す店は、はやっています」。
インドネシアから来たクルニア・プトゥラさん(40歳)は元シェフです。「こってりしたとんこつ味が好きだけど、インドネシアではあっさり味ラーメンしかなくて」。ここで学んで自分の店を持つつもりです。
「鶏がらは最低4時間煮こむ」「ショウガはすりおろしてから計量して」。こうした説明を英語で伝えるのは通訳の藤木真美さん(36歳)です。「昆布やカツオ節など、日本独自のものは説明を加えながら訳しています」。ここで通訳をして3年以上になります。「もう、自分でも作れるくらいくわしくなりました」と笑います。
スープや味は国に合わせて
宮島さんはもともと広告などのデザイナーでした。会社のマークのデザインをするなかで経営のアドバイスをするようになり、それが仕事になりました。
ある時、経営が難しくなったラーメン店の相談を受け、結局、自分で引きついで立て直しました。ここからラーメン専門にアドバイスするようになり、2000年にスクールを開きました。
「日本人は味にこだわるけど、店が成功するかどうかは場所や雰囲気、接客などいろいろな要素があるんです。本当は経営を教えるつもりだったけど、今はラーメンの作り方を教えるのが中心になっています」
外国からの生徒が増えだしたのはここ10年です。「海外のラーメンブームとインターネットの発達でスクールのことが広まったのでしょう」。初めは中国と韓国が中心でしたが、今は世界各地からやってきます。これまで500組ほどを教えました。生徒が帰国して開いた店が大繁盛店となっているところもあります。
スープの材料や味は国や好みに合わせて考えます。カツオ節や昆布が手に入りにくいヨーロッパの人には魚介類で、肉や魚を食べない人にはキノコ類やニンニクでだしの取り方を教えます。魚をあまり食べない国の人には魚くささが出ないように気をつけます。午前10時からの講座のために朝5時から仕こみをします。
小学生の時は絵や工作が得意で、変わった作品を作っていたという宮島さん。勉強しないとぼやくお母さんに、先生は「大丈夫、いいものを持ってますから」と言ってくれたそうです。
「今思うと『独創性』ってことだったのかな。小学生には、何か人とちがうことをしたいという気持ちを大事にしてほしいですね」
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