3人の書店員さんが、今おすすめの1冊を紹介します。
命を預かることの責任知り…『ぼくとニケ』
玄太が学校から帰宅すると、幼なじみの仁菜が家の前に立っていました。大事そうに抱えたダンボールの中には1匹の子ネコが。公園で拾われたこのネコは「ニケ」と名付けられ、玄太の家族の一員になります。
ニケを育てるうち、仁菜が最近学校に来なくなった理由や、仁菜の母がネコを飼うことをかたくなに反対するわけが明らかになります。そして、玄太は、命を預かることの責任を知ることに……。
15歳で作家デビューし、その後も作品を発表し続けながら、獣医師になった著者の片川さん。彼女ならではのこの物語は、私たちの身近にある命の存在を改めて考えさせてくれます。ペットショップに行く前に、ぜひ読んでください。新しい家族との日々が、より素晴らしくなるはずです。
(大阪・MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 森口泉)
子どもが大人になる瞬間とは…『深呼吸の必要』
体で深呼吸できても、心を深呼吸させることは難しいものです。私たちの毎日は考えなければならないことが多すぎるし、インターネットを見て何時間でも退屈せず過ごせてしまいます。
詩のようなやさしい言葉で書かれたこの本は、ざわざわと落ち着かない心をいったん立ち止まらせ、大きく息を吸うことを思い出させてくれます。著者は、誰もに訪れる「子どもからおとなになる一瞬」に深く視線を投げかけ、その瞬間について、子ども時代の美しさについて、失われていくものについて、読者に問いかけ続けます。
昔を思い出し、今いる場所を再確認する。おとなと子どもの境界をスリリングに行き交う10代のみなさんにこそ読んでほしい一冊です。
(東京・HMV&BOOKS 日比谷コテージ 花田菜々子)
人ではないものに出合ったら…『まれびとパレード』
台風接近中の海でサーフィンをして行方不明になった元彼が、ゾンビとして現れる――「サーフィン・ゾンビ」。
建て替えのための仮住まいに現れた座敷わらしと、引きこもりの弟の関係を、姉が見守る――「弟のデート」。
倉庫跡地から気味の悪い男の声がするという苦情の対応で、現地に行った市役所職員が泥田坊と遭遇する――「泥侍」。
奈良・興福寺東金堂の四隅を守る四天王に踏まれている邪鬼たちの、夜の散歩を描く――「ジャッキーズの夜ふかし」。
人ではないものと出合ってしまった人たちの四つの物語です。デビュー作『ボーナス・トラック』で怖くない幽霊との友情を描いた著者らしい、コミカルで優しさが感じられる作品。ほっこりした気持ちになるはずです。
(千葉・オークスブックセンター南柏店 高坂浩一)
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