お笑いコンビ・麒麟の川島明さんがおすすめのマンガを紹介するコラムが、4月から朝日中高生新聞で始まります。川島さんにマンガの魅力や連載への思いを聞きました。(構成・谷ゆき)
――マンガを読み始めたのは?
4、5歳の頃だったと思います。家に『ドラえもん』があって、それを読んでいたのと、四つ上のお兄ちゃんが『キン肉マン』を買っていて一緒になって読んでましたね。音楽もお笑いも、基本的に文化は兄貴が外から輸入してきて、その影響を強く受けました。
初めて自分で買ったマンガは、『キン肉マン』の5巻やったんやないかな。兄貴が1~4巻を集めていて、兄貴より先に手に入れたい、兄貴より先に読みたいっていう弟の意地ですね。めっちゃ怒られましたけどね(笑い)。
――マンガは描くのも好きですか?
基本的に絵を描くのが好きだったので、子どものときから『ドラえもん』や『あしたのジョー』をまねして全部描いてました。授業中も描いたりしてね。運動はほぼできなかったので、マンガを描くことで友達が増えたっていうのもあります。高校生のときに、4コママンガを雑誌に投稿したのが何度か載って、賞品でテレビゲームのカセットなんかをもらったりもしていました。
ぼくは中3くらいのときに「お笑いをやりたい」って本気で思ったんですけど、親とも相談して取りあえず高校を出てからってことになって、進学校に行ったんです。正直、高校にも行きたくない、友達を作るつもりで行ってないから友達がいないんですね。クラスでも存在感がない。登下校しようが誰も覚えてない。そんな人間だったんです。
それが、投稿したマンガが全国誌に載るわけですよ。そこで自信がつくというかね、認めてもらったという気持ちになりました。自分の生存確認っていうのかな。その時期、4コママンガはそういう存在だったし、芸人になるためのはしごになりました。
――マンガの魅力とは?
人生の教科書っていう面がありますね。意外と学校の教科書より深いことや、人生の正解が書いてあったりする。例えば『あしたのジョー』もいまだに読むんですけど、20代、30代、40代のときで全部注目ポイントが違うんです。最初は矢吹丈がすごいなと思っていたけど、もう少し後になると力石徹がすごい。この年になるとホセ・メンドーサがかっこええなって。
家族がおってこんなに強いっていうのはすごい努力をしたんだなっていうのがわかるんです。結婚して娘がおって読むと、またマンガも「顔」を変えるっていうかね。だからもうほんと、一生読める教科書やと思ってます。
――連載に向け、ひと言。
中高生世代が、あまり知らないマンガばっかり紹介しようかなとは思っています。古いってだけで読まないのはもったいないって思いがあって、それを伝えるのもぼくら40歳の仕事かなと。
スポーツに没頭してるとか、動画アプリで友達と踊ったりしてる時間とか、そういう青春もあると思うけど、そうじゃない人もいるわけで、「勉強頑張ってるんだけどなんかうまいこといかねえな」「恋人もいないな」「うーん……」みたいな人に「この本読んでみようかな」って思ってもらえたらいいですね。
大人になるのが不安、一緒にふざけてたやつが急に塾行くとか進学校行くとか、取り残された気がすることもあると思うんですけど、そういうときマンガってちょうどいいと思うんですよね。そういう人に共感してもらえると、一番うれしいです。
* *
かわしま・あきら 1979年生まれ、京都府出身。NSC大阪20期生。99年10月、同期の田村裕とお笑いコンビ「麒麟」を結成。バラエティー番組出演多数。4月から始まるNHK連続テレビ小説「なつぞら」ではアニメーターを演じる。
外部リンク