「野菜をもっと食べなさい!」。子どもだけでなく、大人になってもいわれ続ける言葉です。なぜ野菜は体にいいのでしょう。医学博士で、野菜の免疫機能にくわしい大西信彦さんに、その理由を教えてもらいました。
(倉坂益子)
野菜が体にいいといっても、どうやって食べるかが問題です。たとえば、ゴマを粒ごとのみこんでも、そのまま体の外に排出されるだけで栄養はゼロ。すりゴマにして初めて栄養がとれます。つまり、野菜の細胞壁をこわして初めて、私たちの体は野菜の栄養を吸収できるのです。
野菜の細胞壁をこわす方法は簡単。熱を加えるか、すりつぶすかのどちらかです。煮たり、いためたり、蒸したりして熱を加えることで、野菜はやわらかくなり、細胞壁がこわれやすくなります。
野菜の栄養が効果的にとれるのは鍋ものです。しかも、煮汁は栄養の宝庫です。野菜の細胞壁がこわれて溶けだすからです。具の種類が多いので栄養素の相乗効果もあります。煮物や、野菜入りのみそ汁などもいいですよ。
さて、ちょっと難しい話をします。ミネラルという言葉を聞いたことがあるでしょう? 自然界の土の中などにふくまれる元素で、カリウム、ナトリウム、カルシウムなどがあります。私たちの細胞を活発に働かせるために最も必要な栄養素です。私たちはこれを自力で作りだすことができないため、土の中のミネラル分を吸収した植物を食べて、ミネラルをもらう必要があります。野菜が体にいいといわれるのは、そういう理由です。
コンブ、ワカメなどの海藻は、海水に溶けているミネラルを吸収して育ち、魚はプランクトンを介してミネラルを吸収します。しかもミネラルは、ラグビー選手のように「チームで働く」性質を持っています。ミネラルをふくむ野菜や海藻などを食べることで、ミネラルが結束し、体内での働きが活発になります。それが、私たちの体を病気から守り、万が一病気になっても回復を早めてくれることにつながるのです。
根菜がおいしい時期になりました。色の濃いカボチャ、黒豆、ゴボウ、ナスなどは特にミネラルが豊富ですよ。
おおにし・のぶひこ 1942年生まれ。医学博士、株式会社「光未来」顧問。免疫活性方法の研究を通じて、ミネラルを中心とした栄養素の必要性や役割をつきとめた
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