本屋さんにはたくさんの本があふれ、お子さんに手渡す1冊に迷ってしまうことがありますよね。子どもの本の専門店・ちいさいおうち書店(長野県松本市)の店長・越高一夫さんが、最近出た本の中から、おすすめの3冊を紹介します。今日は、中学年からの1冊です。
『ノウサギのムトゥラ 南部アフリカのむかしばなし』
作 ビヴァリー・ナイドゥー、絵 ピート・フロブラー、訳 さくまゆみこ、岩波書店、1728円
小さくたって負けない知恵が
長い間、どれいにされたアフリカの人たちの多くは、小さい者が大きい者に立ち向かっていくといった昔話を語ったり聞いたりすることで、心を解放してきました。
ノウサギのムトゥラは、小さいながらも知恵がよく働き、自分よりも大きくて強い動物たちにも負けていません。
ある日、ゾウに小さいとからかわれたムトゥラは、カバのところに行って、自分の代わりにゾウのつなひきの相手をしてもらおうと考えました。ゾウとカバはおたがいに、つなひきの相手は小さなウサギだと思っているので、負けるわけにはいかず、いつまでもつなひきをやめません。そして……。
体が大きいからといって、力も強いとはかぎらないと考えているムトゥラは、ライオンを出しぬいたり、ワニをこらしめたりと、いたずらや思いがけない行動をする「トリックスター」の役割をはたしています。
訳者のさくまゆみこさんは「アフリカ子どもの本プロジェクト」代表で、アフリカの本をたくさん日本に紹介しています。
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次回配信では、高学年からの1冊を紹介します。
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