逆算と分析で綿密な計画立てる
医学部に在学中で、英語や数学の各種検定でも1級を取得……。東京大学の河野玄斗さん(医学部5年)のことです。読者のみなさんのなかには「とてもじゃないけれど、手が届かないような頭のよさ」と感じる中高生がいるかもしれません。けれども、こうした成績や結果を生み出したのは、決して「天才だから」ではありません。綿密な計画に沿った勉強のたまものだといいます。自身の勉強方法についてポイントを聞きました。(小勝千尋)
失敗をバネに勉強を工夫
最難関といわれる東京大学の医学部(理科三類)に在学中、司法試験にも合格した河野さん。でも、これまでに失敗や挫折なども経験してきました。
小学6年のとき、中学入試に臨みましたが、第1志望校は不合格に。算数でケアレスミスがめだち、悔しい思いをしました。しかし、ケアレスミスをそのままにすることなく、どうすればミスをしないようになるか工夫するようになったといいます。
たとえば計算。マイナス同士の数字をかけ合わせるとき、符号がプラスになるのを見落としがちだったので、計算をするときには必ず符号に印をつけるなどしたそうです。
河野さんは「ミスが起きやすいところを分析してパターンを見つけ、対策を立てることでケアレスミスはなくなります」。
受験をはじめ、目標を実現するために取り入れているのが「逆算勉強法」。上のイラストにあるように手順はシンプルです。最初に取りかかるのは目標を決め、達成するまでに必要な内容を分析すること。受験であれば、合格した人に話を聞いたり、過去問(実際の入試問題)を見たりして出題傾向をとらえます。
次に、こなすためのスケジュールを大まかに組み、計画を1日ごとに細分化します。自分が立てた計画の方向性がまちがっていないかどうかをチェックするため、進み具合を定期的に確認するのが大事です。
「最終的な幸せ」を考える
逆算勉強法に欠かせないのが取り組みに対するモチベーション(やる気)。それが勉強の質の高さや、効率のよしあしに関わるそうです。「モチベーションを保つには『どうすれば自分が一番幸せになれるか』をイメージするのが大切」と河野さん。勉強しなければならないけれど、遊びたいという気持ちをおさえられない――。こんな場合、自分にとっての最終的な幸せから逆算して、いま何をすべきかを割り出します。
医療ミスなどを担当する医療弁護士をめざし、司法試験で「合格」を手にできたのも、この勉強法のおかげ。いまは勉強をつづける一方、自分にしかできない一番楽しめる道を模索している最中だといいます。
受験をめざす中学生や高校生たちにとって、10月は「本番」までの道筋が、より具体的に見え始めてくる時期にあたります。河野さんは「ここでがんばるかどうかで結果はもちろん、受験を通して得られるものもかわります。『がんばった!』といい切ることができれば、たとえ残念な結果に終わったとしても自分が努力できたという点で自信が持てるはず」と話します。
「受験はまだ先というみなさんも待っているだけでなく、勉強をどんどん先に進めてください。先に行けば、ちがう世界が見えてきて選択肢も広がります」
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河野さんはこの夏、自身の勉強法をまとめた本を出版しました。ツイッターやインスタグラムなどのSNSに寄せられた中高生からの疑問なども参考にしたといいます。「自分の勉強法を出し惜しみせずに伝えることで、勉強に対する考え方をかえて、楽しいと思ってほしい」。こんな気持ちがこめられています。
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