本屋さんにはたくさんの本があふれ、お子さんに手渡す1冊に迷ってしまうことがありますよね。子どもの本の専門店・ちいさいおうち書店(長野県松本市)の店長・越高一夫さんが、最近出た本の中から、おすすめの3冊を紹介します。今日は、中学年からの1冊です。
『南極点 夢に挑みつづけた男 村山雅美』
文・型染版画 関屋敏隆、ポプラ社、1728円
56年の年月をかけた大挑戦
日本の第1次南極観測隊が南極に向けて出発したのは、1956年11月。そのとき隊員として参加したのが、この絵本の主人公・村山雅美です。その後、彼は2次、3次、5次、7次隊の隊員として南極へ向かいました。そして、ついに9次隊で、人生をかけていどんできた「南極点」にたどり着きます。
その間、南極を目指す船も「宗谷」から「ふじ」に変わり、性能がいい新型雪上車を昭和基地に届けることが可能になりました。雪上車4台に隊員12人が乗りこみ、ついに日本人が「南極点」に立つことができたのです。1912年に日本の探検隊が初めて南極点を目指してから、56年の年月が流れていました。
この絵本は、「南極野郎」「南極男」と呼ばれた村山雅美のチャレンジ精神に感動した作者の、熱い思いから生まれました。隊員一人ひとりに思いをはせ、似顔絵をかくなど、その思いが見事に伝わってきます。また、型染版画という独特な手法で仕上げた絵は、見る人に強いインパクトをあたえ、心に残る一冊になることでしょう。
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次回配信では、高学年からの1冊を紹介します。
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