『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』
頑張る先輩の背中が後輩のチャレンジを促す
新しい中学1年生が入ってくると、「開成にうまくなじめるだろうか」と毎年、柳沢校長は気をもむそうだ。
けれど、生徒が続々と自分の好きな部活動に入っていくのを見るともう安心だ。あとはいわば放っておいても、うまく回っていくと確信できるというぞ。
「大学受験についても、先輩後輩の結びつきは、いい作用を及ぼします。熱心にやる人は高校3年の5月まで運動会などの課外活動に打ち込んでいます。
それこそいつ勉強しているんだろうと思うほどですが、課外活動を引退してからしっかり切り替えて、そこから勉強して多くは希望する大学へ入っていきます。
それを間近で見ていた後輩はどう思うか。あの人でも受かったんだ、じゃあ自分もという気持ちになりますね。志望する大学に入ることへのハードルが低く見えるのです。
人はあまりにハードルが高いと跳ぶ前から心配ごとばかり並べ立ててしまいます。ハードルを気にせず果敢にチャレンジを繰り返していったほうが、ものごとを乗り越えられる確率は高くなるものです」
学業以外の価値観を学ぶ場として部活を重視
部活動を強調し活用するのは、開成に独自の事情もひとつあるようだ。
「開成に来る子は、小学生時代にはどの学校でもトップクラスの成績です。ところが中学に入って、最初の中間試験があると順番がつきますね。
そこで上位の成績を収められてホッとする人はほんのひとにぎり。あとの大半の人は、小学生時代よりも順番が落ちてしまいます。
学業成績だけを価値だと考えていると、がっかりして落ち込んでしまう人が出てきます。
成績がいいのは価値あることですが、世の中にはいろんな価値があって、学業優秀というのもそのうちのひとつだと考えをシフトしてもらわなければいけません。
大切なのは自主性を持ってものごとに取り組み、自律した自分をつくり上げること。中学校に入ったら早いうちにそのように価値観を変えていってほしい。
そのためには部活動に打ち込み、同好の士と好きなことを共有する時間を持つことが、たいへん効果的なのです」
柳沢幸雄 1947年4月14日生まれ。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の第一人者。開成中高卒業後、東京大学(工学部)、同大学院で学ぶ。民間企業で働いた後、ハーバード大学や東京大学などで環境分野の研究職に就く。2011年から現職。
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「ドラゴン桜2」 作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。
ライター・山内宏泰 主な著書に、『親が知っておきたい 学びの本質の教科書 教科別編』(朝日学生新聞社)、『ドラゴン桜・桜木建二の東大合格徹底指南』(宝島社)、『上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史』(星海社新書)、『文学とワイン』(青幻舎)などがある。
※柳沢幸雄先生のインタビューは、11月1、4、6、8、11、13日に全6回配信します。今回は第4回でした。
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