2018年4月から今年3月まで朝日小学生新聞で連載していた「枕草子 いとめでたし!」が書籍になりました。平安時代の清少納言が書いた「枕草子」を小学生向けに読み解いています。著者の天野慶さんと、監修を務めた赤間恵都子さん(十文字学園女子大学教授)は「小学生のうちから親子で古典のおもしろさを味わってほしい」と話します。
季節を感じながら読む
「春はあけぼの」で有名な「枕草子」。清少納言が見聞きした宮廷の生活や自然のようすなどの感想が約300の文章(章段)でつづられています。
天野さんは、枕草子を読み始めたころは「美しいエッセーのイメージだった」と振り返ります。しかし、読み進めていくと、時には物事のよしあしをはっきりと述べていたり、時には誰も目にとまらないことを描写したりする清少納言の着眼点に驚いたそうです。千年前の話にもかかわらず今に通じることがたくさん書かれてあったことも、小学生向けに紹介したいと思う決め手でした。
大学で「枕草子」を教えている赤間さんは、小学生からでも読みやすい理由に「枕草子が日本特有の四季を基本にしていること」を挙げます。「季節にそった章段から、今の私たちも同じように季節を感じながら、清少納言が書いた文章を受け止められるはずです」
親子の話題のヒントに
連載の原稿を書き始めた当時、小学生の子どもが2人いた天野さん。原稿を書いては、子どもたちに読んでもらい、感想を聞いていました。
特に子どもたちが反応を示したのは「蚊が『ぷ~ん』って顔の近くを飛びまわるのが憎らしい!」という話や「ネコの耳の中は毛がびっしりと生えているし耳の穴の形も複雑でむさくるしい!」の話でした。
「『この気持ち、わかる!!』『こんなところまで見ているなんてすごい。ふつう気づかないよ』と子どもたちと話が盛り上がりました」と天野さん。「『清少納言はこう言っているけれど、どう思う?』など、子どもとの会話のヒントになると思います」
赤間さんは「親子で枕草子を作ること」をすすめます。「春は」「夏は」などの四季や「電車は」など、一つのことをテーマにして書いていきます(作り方の詳細は書籍で紹介しています)。「同じテーマでも年代によって取り上げるものがちがうので、そのちがいを楽しんでほしいです」
古典を身近に感じて
書籍では、枕草子以外にも「万葉集」「方丈記」「徒然草」など13作品をイラスト付きで紹介しています。
中学校や高校での古典の授業では、受験対策などから文法を覚えることが先行しがちです。赤間さんは「それで古典に苦手意識を持ってしまうのはもったいない」と話します。
また古典は、現代の作品などの題材にされることも。2016年に公開された新海誠監督の映画「君の名は。」も、「とりかへばや物語」という古典文学などから着想を得ています。
「『昔の話だから難しい、つまらない』ではなく、今の話の中にも古典がまぎれていることを知ること。そうすれば、古典が身近に感じられると思いますよ」(天野さん)
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