オンラインゲームなどのやり過ぎで生活に支障が出る「ゲーム依存症」の対策を教育、医療関係者らが学ぶ講習会「ゲーム依存から子どもを守る!」(四国新聞社主催)が19日、高松市サンポートのかがわ国際会議場であった。国内初のインターネット依存外来を設けた久里浜医療センター院長の樋口進氏と同センター主任心理療法士の三原聡子氏が講師を担当。ゲーム依存に特化した教育、医療関係者向け講習会は県内では初めて。若者への広がりが懸念されるゲーム依存だが、相談・治療窓口は不足しており、人材育成などの充実が叫ばれる中、県内の教育、医療関係者ら約300人が詰め掛け、問題解決へ真剣に向き合った。
ゲーム依存を巡っては世界保健機関(WHO)が今月末にも疾病への正式認定を予定するなど、世界レベルで問題が表面化している。ただ、国内の取り組みは遅れており、相談・治療体制は整っていないのが実情だ。
こうした中、県は19年度予算に初めて対策費を計上。全国に先駆けて人材育成を柱にした対策に乗り出した。県議会も超党派の議員連盟を結成し、議員発議による条例制定を目指すなど、県を挙げた取り組みが本格化しつつある。
講習会は、ゲーム依存症の相談支援・治療体制の充実につなげようと企画。県教委、県医師会が後援した。工代祐司県教育長のほか小児科医や養護教諭、スクールカウンセラーらが参加し、開催に当たっては浜田知事、県医師会の久米川啓会長がメッセージを寄せた。
登壇した樋口氏は、ゲーム依存症患者のほぼ100%はオンラインゲームが原因とし、「『終わりがない』といったゲーム側の要素と、ネット上で仲間とコミュニケーションがとれるなどの人側の要素が組み合わさり、より依存性を高めている」と解説。骨密度の低下や脳への悪影響など、過剰なゲームが健康に深刻な影響を与えることも指摘した。
「遅れているのが実情」という予防対策に関しては、幼少期の対策の重要性を指摘。ネットやゲームの使用年齢を遅らせたり、家庭でルールを決めて使用時間を少なくさせたりする取り組みが有効と説いた。
三原氏は、強力なアイテムを有料でくじ引きする「ガチャ」の危うさなどを紹介。ゲームで対戦相手と技を競うeスポーツにも触れ、「プロになれる人は極めて少ない。流行させるならまずは依存症対策を徹底しなければいけない」と警鐘を鳴らした。
依存症患者との接し方に関しては「頭ごなしにゲームを否定するのは逆効果」と強調。文部科学省主催で毎年開催している8泊9日の「断ネット」キャンプを例に挙げ、「最初は『ネットなしでは過ごせない』と話していた子どもたちが、徐々に助け合うようになってくる」とネット以外の楽しさによる治療の効果を示した。
◎ズーム
ゲーム依存症 オンラインゲームなどの過剰使用で、睡眠障害や引きこもりなど、日常生活に支障が出る状態。うつ病などの合併症を引き起こす恐れもある。厚生労働省が昨年公表した推計では、中高生全体の7人に1人が病的なネット依存の疑いとされた。同省では今年に入り、初の実態調査にも乗り出している。世界保健機関(WHO)は昨年6月、「ゲーム障害」を新たな疾病として認定、依存症の一つとして国際疾病分類に加えた。5月下旬の総会で採択される予定。
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