近年多発している台風や集中豪雨による浸水被害に備え、県は新年度、住民の避難の迅速化を図るソフト対策を強化する。想定し得る最大規模の高潮による浸水想定の作成に着手するほか、ダムの緊急放流に伴う下流の河川の水位変動をシミュレーションして下流域の住民が危険を察知しやすくする。堤防などハード整備との相乗効果により、大規模氾濫などからの「逃げ遅れゼロ」を目指す。
県内の高潮被害では、2004年に台風16号の接近と大潮の満潮が重なり、高松市中心部をはじめ沿岸部のほぼ全域で甚大な被害が発生。全県の住宅浸水は床上、床下合わせて約2万2千戸に上った。高松港の潮位は過去最高の2・46メートルに達した。
04年の高潮は「百数十年に一度」のクラスとされるが、新たに「千年に一度」のケースを前提として、沿岸部の浸水被害のシミュレーションに取り組む。試算後に浸水想定区域図を作成するほか、高潮により大きな損害が生じる恐れがある海岸の指定や、避難を判断するための特別警戒水位の設定を検討する。
一方、昨年7月の西日本豪雨では、愛媛県内のダムで安全とされる基準を上回る緊急放流をした結果、下流域で大規模な浸水被害が発生した。素早い避難の重要性が再認識されると同時に、避難の迅速化を図る方法が課題となっている。
香川でもダム緊急放流時の警報放送などを行っているが、下流河川の水位変動の影響は十分把握できておらず、住民の早急な避難や浸水対策に役立てるため、初めてシミュレーションすることを決めた。
県によると、19年度は内場ダム(高松市)など県管理のゲート式ダムがある8河川を対象に実施予定。流域の予測雨量に基づくダムへの流入量や、放流時の下流河川の水位上昇高を試算する。最終的には、県管理の12河川を対象に進めている洪水浸水想定区域の見直し作業に反映させる方針だ。
このほか、水位計の新設を進めている県管理33河川について、新たに氾濫危険水位の設定に向けた検討を始める。
県河川砂防課は「大規模水害は全国各地で頻発し、香川で起きてもおかしくない。早急な避難で命を守ってもらう体制づくりに努めたい」としている。
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