空からのたより
ある日、森の中を散歩していると頭に何か落ちてきました。足元を見るとつやつやとしたドングリが。実りの秋はドングリの季節です。ドングリとは、カシやクヌギ、コナラなど、ブナ科の木の実のことです。日本の気候は、このブナ科の木が育つのにぴったりなのです。
日本で見られるドングリは約20種類といわれています。これらのドングリを見比べてみると、殻斗と呼ばれるぼうしの部分が、カールしていたり、うろこ状だったり、しましまだったりしますが、実の部分はどれも似ています。
そのため、よく似たもののことを「ドングリの背比べ」といいますね。ただ、ドングリの中でも鹿児島県や沖縄県にあるオキナワウラジロガシの実は別格です。3~4センチもあり、とても大きなドングリです。
日本は今、これらブナ科の木をふくめ、国の面積の7割近くが森林でおおわれている「森林国」です。ところが、昔の日本はそうではありませんでした。江戸時代には急激に人口が増え、山の木が切られて生活に利用されました。
また、明治時代や第2次世界大戦の戦中・戦後にも多くの木が切られて、森林はあれてしまったのです。そのころには、台風や大雨で山くずれなどの災害も起こっていました。今は、十分な手入れがされていないことで森林があれる問題が起こっています。
森林にはたくさんの役割があります。虫や動物などさまざまな生物を育む▽二酸化炭素を吸収して酸素を生み出す▽木の根がはることなどで土砂が流れ出るのを防ぐ役割です。
また、森林の土はすき間が多く、降った雨がゆっくりしみこむため、水質をきれいにしたり、水をたくわえたり、川の水が急激に増えて洪水になってしまうのをおさえたりする役割もあります。
ただ、森林が洪水をおさえることのできる雨の量にも限界があります。大きな川がはんらんするほどの大雨には、森林でもたちうちできません。最近はそんな大雨が毎年のように起こっているのです。一方で、森林は根からたくさん水を吸うため、雨が少ないときには、川の水が減ってしまうこともあります。
ドングリをひろったら、森林についていろいろ考えてみましょう。
鈴木晶子 すずき・あきこ 日本気象協会気象予報士 関西学院大学卒業。2001年に気象予報士、07年には防災士の資格を取得。ラジオやテレビ番組での解説のほか、防災や環境をテーマにした講演も行っている。趣味は山歩き。
外部リンク