はじめまして、川島明と申します。麒麟の「声の低い方」です。「しつこい油汚れ」みたいな方じゃありません。
中高生のみんなは、進路に漠然とした不安があって、夜眠れなくなったこともあると思います。そんな不安が軽くなるヒントにこんな漫画どう?とこれから友達感覚でおススメしていきますね。
記念すべき第1回に紹介したいのが『あしたのジョー』です。主人公の矢吹丈は下町でケンカにあけくれる不良少年。そこを丹下段平に見いだされ人生が変わり、少年院で最高のライバルである力石徹と出会ったことからボクシングの世界へいざなわれていきます。
この漫画のすごいところは、主人公である矢吹丈が天才ではないこと。当時の漫画は主人公は絶対的エースであるのが主流でした。しかし『あしたのジョー』は立ちはだかるライバルたちがとにかく強く、魅力的な人間ばかり。
そしてどこか「火薬」のにおいがします。不気味でありながら惹かれてしまう危険なにおいを感じるのです。ジョーはその火薬を自らの魂で爆発させ勝負していきます。
ジョーが人生の中でもがき苦しむ時は読者もつらく息苦しくなります。しかし、その暗闇を抜け出し再び勝負の世界に身を投じたジョーから、あのセリフが発せられるのです。「ほんのしゅんかんにせよ、まぶしいほどまっかに燃えあがるんだ。そして、あとにはまっ白な灰だけがのこる」。この言葉が、ジョーがリングの上で真っ白に燃え尽きるラストシーンにつながるのです。
芸人を目指した頃、この言葉に何度背中を押されたことでしょう。この漫画がなければ麒麟はいなかったでしょう。僕が初めて読んだのは、みなさんと同世代の時でした。進路を決めて努力することも正しいと思います。でも、自分がほんの少しでも真っ赤に燃えられる「何か」を焦らず見つけてください。その「何か」の火が、進路を照らすこともありますよ。
【プロフィル】かわしま・あきら 1979年生まれ、京都府出身。NSC大阪20期生。99年10月、同期の田村裕とお笑いコンビ「麒麟」を結成。バラエティー番組出演多数。NHK連続テレビ小説「なつぞら」ではアニメーターを演じる。
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